村田製作所は2023年5月10日、安永と共同で、電子機器向け放熱部品「ベイパーチャンバー」用に、新しい材料を用いたウィックを開発し、発表した。村田製作所と安永の共同開発品第一弾で、開発したウィックを搭載したベイパーチャンバーは、台湾のCooler Masterが製造、販売する。
新しい材料を用いたウィックは、安永が独自開発した微細形状加工箔に、村田製作所の設計ノウハウを組み合わせ、開発した。この新しいウィックにより、厚み200μm未満の超薄型ベイパーチャンバーの開発に成功している。
ベイパーチャンバーは、薄い金属箔を貼り合わせた筐体(コンテナ)の中に、作動液(水)とウィックを封入した熱拡散デバイスで、熱源で生じた熱を受けて作動液が蒸発し、ベイパーチャンバー内部で蒸気が拡散することで放熱する。放熱後は蒸気が液体として再度凝縮し、微細な隙間を備えたウィックによって熱源まで循環する。
一般的にウィックには、金属メッシュ、金属粉焼結が使用されるが、新しいウィックは安永が独自開発した微細形状加工箔を採用している。新しいウィックは、従来ウィックに比べて数倍の毛細管力を有しており、ベイパーチャンバーのさらなる高性能化、薄型化に対応する。
新しいウィックを用いた超薄型ベイパーチャンバーは、超薄型構造でありながら、スマートフォンに求められる入熱量に対しても高い均熱特性を達成している。両社は今後も、次世代デバイスの熱問題解決に向けた製品作りのため、協業関係を強化していく。