バイオマス由来の2種のプラスチックを組み合わせた新しい素材を開発 産総研

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は2023年5月19日、バイオマス由来のポリエステルとポリアミドを組み合わせた新しいプラスチック素材を開発したと発表した。新素材は透明なフィルムとして成形でき、このフィルムは汎用プラスチック水準の強度を持ち、引き伸ばすほど強度が増すという特徴がある。技術の詳細は5月16日、「Macromolecular Rapid Communications」(オンライン版)に掲載された。

同研究所などの研究グループが開発した新素材は、バイオマスから合成可能な生分解性高分子として知られるポリエステルの一種、ポリブチレンサクシネート(PBS)と、同様にバイオマスから合成可能な生分解性高分子であるポリアミドの一種、ポリアミド4(PA4)を繰り返し結合させて、生成される。

産総研は、PA4とポリエステルの複合化に取り組む中で、柔軟性があり融点が低いため成形加工しやすいPBSに着目。しかし、PA4とPBSは簡単に混ぜ合わせられないため、PBSとPA4を結合した構造の両親媒性高分子「PBS-b-PA4」を設計し、2021年に合成技術を確立した。今回は、この技術を用いてPBSブロックとPA4ブロックを交互に繰り返し結合させることで、マルチブロック型共重合体を開発した。

具体的には、PBSの片末端をアミノ基、PA4の片末端をカルボキシ基に制御する合成技術を応用し、両末端にアミノ基を導入したPBSと、両末端にカルボキシ基を導入したPA4をそれぞれ合成した後、両末端のアミノ基とカルボキシ基を縮合剤の共存下で100℃、1時間反応させ、アミド結合させる。これによって、PBSブロックとPA4ブロックが交互に繰り返し結合したマルチブロック構造の高分子が合成される。収率は93%以上だった。

PA4単体ではフィルム形成ができないが、この手法でマルチブロック型共重合化するとフィルム形成が可能になる。また、PBSとPA4のブロック長の違いによって、フィルムが白濁したり、引張強度が異なったりすることも分かった。ブロック長の長さによる性質の違いを比較したところ、ブロック長が短いPBSとPA4を組み合わせたフィルムは、透明で伸びる力が強く、最大で元のフィルム長さの約450%にまで伸びた。また、フィルムは引っ張って伸びるほど強度が増していくことも分かった。

こうした性質を利用すれば、そのまま使えば軟らかく割れにくいフィルムとなり、引っ張ってから使うと硬いフィルムとなる素材を開発できる可能性がある。同研究所は「今回開発した複合化の手法は、PBS、PA4以外のさまざまな高分子の設計にも応用でき、新たなバイオマス由来プラスチック材料の開発に役立つ」としている。

関連情報

バイオマス由来の2種のプラスチックを組み合わせた新素材を開発

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る