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エネルギー密度と電圧が大幅アップし、往復効率が99.7%の新しいリチウム-水素ガス充電池 中国科学技術大学

Image by USTC

中国科学技術大学は2025年2月14日、水素ガスを従来のようにアノード(負極)に用いるのではなく、カソード(正極)に用いることでエネルギー密度と動作電圧を大幅に向上させた、新しいリチウム-水素ガス充電池の開発を発表した。

水素ガスは、その優れた電気化学的特性から、安定かつコスト効率の高い再生可能エネルギーキャリアとして注目されている。しかし、従来のようにアノードに水素ガスを使用する電池は、電圧範囲が0.8~1.4Vに制限され、エネルギー貯蔵容量も限られる。

今回研究チームは、水素ガスをカソードとして利用する新しいアプローチを提案した。この電池は、リチウムをアノードとして組み合わせた場合に優れた電気化学的性能を示す。

まず、リチウム-水素(Li-H)電池のプロトタイプとして、リチウム金属アノード、水素カソードとして機能する白金をコーティングしたガス拡散層、固体電解質(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3またはLATP)で構成されたものを設計した。この構成により、望ましくない化学反応を最小限に抑えながら、効率的なリチウムイオンの輸送が可能となる。

実証実験では、このLi-H電池は約3Vの安定した電圧を維持しながら、理論エネルギー密度2825W/kgを達成した。さらに往復効率(RTE)は99.7%という驚異的な値であり、充放電サイクル中のエネルギー損失を最小限に抑えて、長期安定性を維持できることを示した。

さらに研究チームは、コスト効率、安全性、製造の簡易性を向上させるため、リチウム金属が不要なアノードフリーのLi-H電池を開発した。この電池は、充電中に電解質中のリチウム塩(LiH2PO4およびLiOH)からリチウムを析出させるものだ。標準的なLi-H電池の長所を維持しつつ、さらなる利点もあることが特徴となっている。この電池のクーロン効率(CE)は98.5%であり、効率的にリチウムめっきと剥離できる。また、低い水素濃度でも安定して動作するため、高圧水素貯蔵への依存度を低減できる。

研究では、電解質中でリチウムイオンや水素イオンがどのような挙動を示すのかを理解するために、密度汎関数理論(DFT)シミュレーションなどの計算モデリングも実施した。

研究チームは、従来のニッケル-水素電池と比較して、Li-H電池はエネルギー密度と効率が向上しており、次世代の電力貯蔵の有力候補になるとしている。そしてアノードフリーのLi-H電池は、よりコスト効率が高く、拡張性のある水素ベースの電池の基礎となるという。今回の成果は、再生可能エネルギーグリッドから航空宇宙技術まで、さまざまな応用が期待される。

研究成果は、『Angewandte Chemie International Edition』誌に2024年11月30日付で公開された。

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