福岡工業大学工学部電気工学科の田島研究室は2016年5月11日、焼酎製造時に生じる「粕(かす)」を活用した充電池を発表した。
この充電池は「電気二重層キャパシタ」タイプで、固体と液体との界面にできる電気二重層現象を利用している。活性炭などの表面にある微細な隙間に多数のイオンが付着したり放出されたりすることにより充放電する仕組みだ。
電気二重層キャパシタは、短時間で充放電する瞬発力に優れており、繰り返しの使用に強いという特徴がある。このため、ハイブリッド自動車でブレーキ時のエネルギーを急速に蓄えたり、発進・加速時に大きな電力を供給するなどの用途に適している。しかし現状では、貯めることができる電気量が少ないことや、コスト面の課題があるという。
田島研究室では、九州で大量に発生し、処理及び有効利用が課題となっている焼酎かすに着目し、焼酎かすを用いた活性炭を作製した。製法を工夫することで、従来から用いられているヤシ殻由来の活性炭と比べ、イオンを表面に保持する能力を約13%向上させた。そしてこの活性炭を電気二重層キャパシタの電極に用いることで、貯めることができる電気量が全体で約20%向上したという。
この充電池は、廃棄物を使用しレアメタル等を用いないため、製造コストの抑制が期待できるという。また、充電、放電時の劣化も少なく長期間使用できるとしている。さらに、大電流を充放電する瞬発力に優れるため、将来的には充電時間の大幅な短縮にも応用できる可能性があるという。
今回の研究は、焼酎かすの有効利用に高い関心を持つ久留米市の紅乙女酒造からの焼酎かす提供により実現したもので、今後同研究室では、充電池としての能力向上とともに、焼酎かすの廃棄費用に悩む九州の焼酎業界への貢献を目指すとしている。