建設業界でのエンジニアの役割。仕事内容や魅力、必要な資格

「エンジニア」と言えば、機械や電気、ITなどの業界で活躍する姿をイメージする人が多いと思います。けれど、それ以外の業界でも、モノをつくり出すエンジニアの力が必要とされています。

例えば建設業で働くエンジニアは、2024年4月から働き方改革関連法が適用され、人材確保に苦労する企業が増えているなどの背景から、転職市場での評価が増してきています。

この記事では、建設業の中で働く建設系エンジニアの魅力的な仕事内容や気になる年収に関する情報、取得すると有利になる資格などを紹介していきます。未来の街づくりに携わる建設系エンジニアの世界を一緒にのぞいていきましょう。

建設業界とは

建設業界は、私たちの生活基盤を支える重要な産業です。建築物や道路、橋梁、ダムなどのインフラ整備を担う土木関連の仕事や、ビルやマンション、住宅などを建てていく建築関連の仕事があり、国土開発や都市計画に大きく貢献しています。

建設業界と、建築業界の違い

建設業界と混同しやすいのが建築業界です。名前は似ていますが、対象としている範囲が異なります。

前項で触れたように、建設業界は建築物をはじめ、道路、橋、ダムなどのインフラ整備も対象としています。一方、建築業界は主に建物の設計や建設・施工に特化しています。建設業界の方がより広範囲をカバーしており、その中に建築業界が含まれている格好です。

建設関連のエンジニアとして土木系の仕事も視野に入れて働くのなら、より多様なプロジェクトに携わる機会があり、土木や環境技術などの幅広い知識を習得できます。建築関連の仕事に取り組むにしても、時代の流れに合わせてアップデートされていく規制に対応していく必要があるでしょうし、最新の建材や太陽光パネルなどの設備、AIやIoTを活用した業務の効率化などに関する知識が求められることもあるでしょう。建設と建築、どちらの仕事も技術革新が進み、環境への配慮がより重要になる中で、エンジニアにはより幅広い知識や高度な専門性が求められるようになっています。

建設業界の就活状況

建設業界は、日本の経済を支える重要な産業として安定した需要があります。ゼロから街をつくり、インフラを整えるようなプロジェクトは多くないでしょうが、東京駅や渋谷駅の周辺などに代表される都市の再開発や、老朽化したインフラを維持管理・更新するプロジェクトもあります。

建設業界を目指すエンジニアの就活難易度は、大手ゼネコンなどを見ると比較的高めですが、対象を中小企業まで広げてみると、人材不足から門戸を広げて採用している状況です。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査(2025年卒)」によると、2025年卒の大卒求人倍率が全体で1.75倍であるのに対して、建設業の求人倍率は9.35倍と全体の5倍以上になっています。製造業の2.07倍と比べると、内定が取りやすい業界だと言えるでしょう。

建設系エンジニアの仕事内容

建設系エンジニアの業務範囲は、設計や施工管理など多岐にわたります。ここからは、具体的な仕事内容について見ていきましょう。

設計業務

建設系エンジニアの設計業務は、主に次の3分野になります。

• 意匠設計
• 構造設計
• 設備設計

意匠設計は、建物の外観や内部空間のデザインを決める業務です。3D CADなどのツールを使い、美観と機能性のバランスを考慮して、クライアントの要望を形にします。

構造設計は構造計算に基づき、安全性や耐久性を確保できるように、建物の土台や柱などの骨組みを決めていく業務です。地震や風荷重なども考慮して、構造解析ソフトを使用しながら効率的で堅牢な設計を目指します。

設備設計は、電気、空調、給排水といった建物内のインフラを設計する業務です。エネルギー効率やランニングコスト、環境負荷などを考え、適切な配置を決めていくことになります。

これらの設計業務では、3D CADやBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などの技術を使いこなす能力が求められます。また、サステナビリティやユニバーサルデザインなど、社会的なニーズを踏まえて、クライアントの要望を満たすように設計することも必要になるでしょう。

監理/管理業務

建設系エンジニアの業務には、設計を基にした施工が計画どおりに進んでいるかを確認する業務も含まれます。

同じ読みになりややこしいのですが、設計者が設計書どおりに建設できているか確認することを「施工監理」、現場監督などが工程どおりに作業が進むように管理・調整することも「施工管理」と言います。

監理業務の具体的な内容としては、主に次のようなものになります。

• スケジュール管理
• 予算管理
• 品質管理
• 安全管理

スケジュール管理は、プロジェクトの全工程を把握し、期限内に完了するよう進捗を管理する業務です。工事中の天候、作業員のシフトや体調なども踏まえながら、計画から遅れが生じないように各所と調整していきます。

予算管理は、プロジェクトの費用を管理し、予算内で完成させられるように管理する業務です。材料費、人件費などを細かく把握し、コスト超過を防ぎます。

品質管理は、設計図や仕様書に従って作業が進められているかを確認する業務です。対象となる項目について品質を試験し、デザイン、寸法、資材、設備などが定められたとおりになっているか管理します。

安全管理は、建設現場での安全性を点検し、従業員のけがを防ぎ、体調管理を担う業務になります。事故が起きないように、工事の安全を最優先に考えます。

給与事情と、将来性

建設系エンジニアの仕事内容を取り上げてきましたが、給与事情や将来性はどうなっているのでしょうか。ここからは、具体的な年収やボーナス、将来性について解説します。

給与事情

Indeedによると、日本の建設系エンジニアの給与は平均で約508万円となっていますが、経験や技能に応じて変動します。

新卒初任給は月20〜30万円程度。DODAの「平均年収ランキング(職種・職業別の平均年収/生涯賃金)【最新版】」によると、30代で平均年収は467万円に達し、40代に入ると500万円台になります。大手ゼネコンではさらに高額になる傾向があります。

建設系エンジニアの中でも、職種によってはさらに高収入を期待できます。プラント設計なら40代で平均年収664万円、技術開発/工法開発なら30代で平均年収601万円といったように、専門性を磨くことで、より一層の収入アップを見込めるでしょう。

将来性

建設系エンジニアは、将来性のある仕事だと言えるでしょう。

新規の大規模開発プロジェクトなどは少なくなっていくかもしれませんが、日本の老朽化してきたインフラを更新する需要や、都市を再開発するプロジェクトは今後も継続して発生することになり、安定した雇用が見込まれます。

また建設業界においても、AIやIoT、ドローンなどの最新技術を導入してさまざまな課題解決を図る取り組みが進められています。環境配慮(サステナブル)建築の需要も増加しています。建設系エンジニアは、新たな技術を学習してその時々のトレンドに対応していくことで、長期的なキャリア形成を思いどおりに進めていくことができるでしょう。

建設系エンジニアになるために必要な資格

建設系エンジニアとしてキャリアを積んでいくのなら、専門知識と技術力を証明する資格の取得を目指した方がいいでしょう。建設系エンジニアにとって重要な資格と取得方法は、次のとおりです。

資格 概要 取得方法
一級建築士 あらゆる建造物の設計を担当できる。
建築設計の最高峰の国家資格
学歴や資格等の受験資格を満たした後、
学科試験と設計製図試験を受験
二級建築士 中小規模の建造物の設計に必要な資格。主に、戸建住宅の設計業務を担当する 学歴等の受験資格を満たし、学科試験と設計製図試験に合格すれば取得可能
建築施工
管理技士
建築工事の施工管理に必要。
1級と2級があり、2級は請負金額4000万円未満の工事まで対応できる
第一次検定は年齢制限のみ。
第二次検定は資格や実務経験に応じて受験可能
各種
CAD資格
CAD利用技術者試験や建築CAD検定試験など 実技試験や学科試験があり、
レベルに応じて選択可能

スクロールできます→

まとめ

建設系エンジニアは、私たちの生活を支えるインフラや建築物の創造に携わる重要な職業です。高度な専門知識と技術力が求められますが、やりがいも大きく、社会貢献度の高い仕事と言えます。

建設業界が変革期にあり、人手不足に陥っている今、デジタル技術や環境配慮設計のスキルを持つエンジニアの需要は高まっています。あなたも建設系エンジニアの仕事に興味を持ったのなら、挑戦してみませんか?

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