“完全自動走行”に必要なAIやデータマイニングの専門家、自動車メーカーへの転職を視野に入れるのか


本コラムは、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・河辺真典氏からの寄稿です。旬のキーワードを取り上げ、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。


自動運転の登場によってエンジニア市場に生じた変化を考える本連載、1回目2回目 に続く今回は、“完全自動走行”を実現するために必要な人工知能、通信、データマイニングといった専門知識を持つ人材を自動車メーカー各社がどのように採用しようと試みているか、現状をお話しようと思います。

人材供給量が足りていない人工知能やデータマイニングの専門家

人工知能やデータマイニングといった技術を持つエンジニアは現在、自動車業界だけではなく、金融企業やスマートフォン向けのゲームアプリを開発する企業などからも引く手あまたです。

こうした分野のエンジニアは、企業側の採用ニーズと比べて人材供給の絶対数が圧倒的に足りていません。自動車メーカー各社は前述のような企業と競争して異業種の企業から中途採用するのか、大学の研究室で学んでいる学生を新卒採用してくることになります。

高年収を提示可能な外資金融やスマホゲーム開発会社が競争相手に

ただ、異業種の企業から引っ張ってこようとすると、年収面が気になります。自動車メーカー各社で働くエンジニアは比較的好待遇ではありますが、外資系の金融企業でシステムトレード用のAIやツールを開発する技術を持っていたり、スマホゲームで最適な課金モデルを考えるためにデータマイニングを任されていたりするエンジニアは、それを上回るほどの高収入ですから。

昔ながらの年功序列型の給与体系のままでは、採用したいエンジニアにとって魅力的な年収を提示することはできないでしょう。ただ実は、自動車メーカーの多くはこうした特殊な才能を持つエンジニアを採用するために、若くても能力に見合った給与を提示する人事制度を別に用意しています。

さすがに2000~3000万円の年収を提示できる可能性はほとんどないでしょうが、それでも外資系金融企業やスマホゲームをヒットさせている会社とも、ある程度のところまでは張り合える額を提示できるようにはなっています。

最終的な年収額では外資系金融企業などと比べると見劣りしてしまうかもしれませんが、自動車メーカーを選べば“完全自動走行”という新たな技術を社会に広めていく一翼を担えるわけです。しかも、入社して働くことになる企業は、トヨタや日産、ホンダなど、世界に大きなインパクトを与えられる会社ばかりです。

「自らの技術力で世の中を変えていく」「これからの社会を支えるスタンダードを生み出す」というところに、年収以上の魅力を感じて転職先として自動車メーカーを選んでくれる人が増えるように祈っています。

“完全自動走行” の実用化で、“自動車向けアプリ”の市場も立ち上がる?

最後に、“完全自動走行”関連のエンジニア市場の話からは少し外れますが、今後の自動車メーカーで、ソフトウエアエンジニアに対するニーズは劇的に増えていく可能性があると感じています。

というのも、既に自動車を制御するために1億行以上のプログラムから成る制御システムを載せているわけですが、“完全自動走行”が広まっていけば“自動車向けアプリ”の市場が立ち上がるのではないか、と考えているのです。

“完全自動走行”に対応した自動車では、これまでは当たり前だった「自分の手でハンドルを握って運転する」というスタイルではなく、iPhoneのようにタッチパネル上のアプリを操作して行き先を指定することになるかもしれません。

そうなったとき、窓の開け閉めにしてもボタン操作で上下させるのではなく、タッチパネルから開閉を操作するようになるはず。音楽の再生にしても、ガソリン給油のタイミングにしても、すべてアプリで管理するようになる。そんな未来が近いうちに訪れる可能性があると予感しています。

もし、私の予感が的中すれば“自動車向けアプリ”を開発するため、これまでIT業界でスマホアプリを開発していたエンジニアが一気に自動車業界へとなだれ込むことになるかもしれません。そこまで状況が進めば、自動運転という技術はエンジニア市場の動向に間接的ながら大きなインパクトを残すことになるのではないでしょうか。


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河辺 真典(メイテックネクスト 執行役員)

メイテックネクストでは、エンジニア専門特化の強みを生かし、豊富な業界知識・技術知識に基づいて「失敗しない転職」のお手伝いをいたします。
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