手で触ることができて音が聞こえるホログラム――音響泳動で立体映像を表示するディスプレイを開発

Credit: Eimontas Jankauskis

英サセックス大学の客員研究員である平山竜士氏を中心とする研究チームは、視覚/聴覚/触覚コンテンツを同時に生成できるボリュームディスプレイを開発した。研究成果は、科学誌『Nature』(電子版)に2019年11月14日付で掲載されている。

ボリュームディスプレイは、2次元表示を3次元的に見せるのではなく、3次元空間に立体映像をそのまま表示するテクノロジー。3DメガネやVRヘッドセットなどを装着せずに、どの角度からも立体映像を見ることができる。

研究チームが開発した「Multimodal Acoustic Trap Display」(MATD/マルチモード音響トラップディスプレイ)は、超音波で粒子を空中に浮揚させ高速で泳動させながら、その粒子にRGB光を照射して像を描く。

平山氏は「私たちの新技術は、電子ビームが高速で画面を走査することで像を作る旧型のテレビ受像機に着想を得たものだ。私たちのプロトタイプは、3次元空間のどこにでも高速で動ける色付きの粒子で同じことを行い、人間の目には空中に立体映像が見える」と説明する。

MATDは、3Dテレビや光照射野ディスプレイなどのホログラム技術に比べ、さらなる知覚を与えることができる。発表された論文によれば、MATDは2次トラップとの時分割多重化、振幅変調、位相最小化を用いて、聴覚コンテンツと触覚コンテンツを生成している。MATDの共同製作者であるサセックス大学のDiego Martinez Plasencia 博士は「超音波は我々には聞こえないが力学的な波であり、空中でエネルギーを運ぶ。我々のプロトタイプは、このエネルギーの方向を操作し焦点を合わせることで、耳を刺激して音が聞こえるようにしたり皮膚を刺激して触覚を与えたりできる」と述べている。

MATDは、これまでのSF映画で描かれていた、手で触ったり音を聞いたりできるホログラムに一歩近づく技術といえるだろう。

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