九大と慶大など、従来の10億分の1のエネルギーで動く分子センサを開発

九州大学 先導物質化学研究所の柳田剛教授らの研究グループは2016年7月20日、従来の10億分の1のエネルギー(pJ:ピコジュール)で駆動する分子センサを世界に先駆けて開発したと発表した。

この研究は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)のひとつとして、慶應義塾大学理工学部の内田建教授と共同で行ったものだ。
現在のモバイル機器では、温度、位置、動きなどの物理的なデータを収集しているが、今後さらに、健康に関連した様々な化学物質に関するデータを収集するセンサエレクトロニクスが重要になる。

しかし、化学物質を電気的に検出する一般的なガスセンサは、その消費エネルギーが極めて大きく、モバイル機器への展開は困難であり、より少ない消費エネルギーで駆動する高感度な分子センサの開発が望まれていた。

今回の研究では、数10nmの径を持つ極めて微小なナノワイヤー構造(nmの径を有するワイヤー構造)に自己加熱法(ジュール熱を介して自己を加熱する手法)を適用することにより、小さなエネルギーで必要最低限のナノサイズ空間だけの熱を制御することが可能となった。

さらに、ナノワイヤーの極めて小さな熱緩和時間を利用したパルス自己加熱法(パルス的に電流を流すことで生じるジュール熱で加熱する手法)を適用して、検出が必要な時だけに熱を時系列で制御。ナノスケール領域における熱を時間/空間的に制御して、世界最小値であるpJ程度の消費エネルギー(従来技術の10億分の1)で100ppbのNOx分子を電流検知可能であることを実証した。

また、パルス自己加熱法を用いることで、パルス加熱を停止している間(低温時)に抵抗値を読み取ることが可能となり、従来の連続加熱法よりもセンサ感度が向上する他、ナノサイズ空間だけにピンポイントで加熱することが可能であるため、温度に弱いプラスチック基板上にも分子センサを搭載できる。

同研究グループによると、この分子センサにより、健康状態に関連した揮発性化学物質の測定装置をモバイル機器等の電子デバイスに組み込む可能性が開かれ、危険物質の検出や肺がんマーカー分子などのより複雑な分子構造の電流検出へと発展することが期待されるという。

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