- 2017-4-17
- 化学・素材系, 技術ニュース
- カーボンナノチューブ, カーボンナノベルト, 名古屋大学
名古屋大学は2017年4月14日、カーボンナノチューブの部分構造を持つ「カーボンナノベルト」の合成に世界で初めて成功したと発表した。単一構造のカーボンナノチューブ合成につながる成果だと見られている。研究成果は、「Science」オンライン版で公開された。
カーボンナノチューブは、炭素原子だけでできた直径1~数十nm、長さ数μm~数mmのチューブ状の物質。軽くて曲げられるディスプレイ、省電力の超集積CPU、バッテリーや太陽電池の効率化など、次世代材料として幅広い分野に応用できると期待されている。それだけ多くの分野で期待されているのは、カーボンナノチューブが構造の違いによって、導電性・半導体特性・光応答性・強度などで異なる性質を示すからだ。
しかし現在の製法では、意図した構造のカーボンナノチューブを合成しようと思っても、単一構造のカーボンナノチューブだけを生成できず、さまざまな構造のものを同時に生成してしまう。さらに単一構造のカーボンナノチューブだけを取り出す手法も確立されていない。こうした課題を解決するため、一部分の構造を正確に合成し、それを単一構造のカーボンナノチューブへと伸長する方法が提案されていた。
そこでカーボンナノチューブの部分構造であるカーボンナノベルトに注目が集まるようになったが、平面構造が最も安定しているベンゼン環を筒状に曲げるため、ひずみが大きく不安定になるという問題があった。
研究グループはその問題を解決しようと、最初にひずみのない環状分子を合成し、次に炭素炭素結合形成反応によって筒状構造に変換するという戦略を採用した。
具体的には、安価な石油成分であるパラキシレンから2種類の部品を合成し、順番に結合していくことで環状分子を合成。環状分子には反応性の高い臭素原子を「タグ」として結合させておく。ニッケル錯体と反応させることで臭素原子を外し、炭素炭素結合へと変換することでカーボンナノベルトを合成することに成功したのだ。
合成したカーボンナノベルトは、カーボンナノチューブと非常に近い構造や性質を持ち、発光材料や半導体材料として各種電子デバイスに搭載できる可能性があるという。