米ペンシルベニア州立大学材料研究所二次元層状材料センター(2DLM)は、グラフェンに代表される二次元材料の原子配列の乱れ(格子欠陥)を高速かつ非破壊的に検査する光学的方法を開発した。
材料の厚さを原子1個分まで薄くして二次元材料にすると、物理的性質が劇的に変化することはよく知られている。グラフェンの場合、それが積層して形成されているグラファイトとは異なる物理的性質を持ち、強靱で伝導率が高い。
二次元材料の物理的性質には格子欠陥が深く関係している。その観察には透過型電子顕微鏡(TEM)が使われるが、デリケートな二次元材料を破壊するおそれがある上に、観察用試料の作成に手間と時間が掛かり、また、イメージ化にも長時間を要するという課題があった。
ペンシルベニア州立大学の開発した方法は、マイナス200度に冷却した試料に特定の波長のレーザー光を照射し、電子の状態遷移によって発生する光子を利用して、格子欠陥を調べようとするものだ。研究者達は三方昌プリズム形の配位圏をとる二硫化タングステンにレーザー光を照射し、硫黄原子空孔(格子欠陥の一種)がある部分が、欠陥がない部分とは異なる波長のシグナルを放つのを捉えた。この結果はTEMでの観察結果やシミュレーションと一致することが確認された。
この高速非破壊検査は、半導体業界における二次元材料の格子欠陥の評価や、二次元結晶物質の特性測定手順の確立に貢献するものと期待されている。