熱力学第一法則に関して、身近な例も踏まえて簡単解説

熱と仕事の関係を示した熱力学第一法則は、熱機関を備える機械の開発に欠かせない法則です。熱力学を扱う機械設計エンジニア以外の人には、あまり馴染みがないかもしれませんが、自動車や冷蔵庫、エアコンなど、身近に使われている機器とも関係があり、省エネルギーの観点からも重要な法則です。この記事では、そんな熱力学第一法則について理解を深めるため、法則の意味や原理、動作例などについて解説していきます。

熱力学第一法則、法則の内容

熱力学第一法則とは、熱力学におけるエネルギー保存則を定式化したもので、熱と仕事、内部エネルギーの関係性を示します。式では(Q=ΔU+W)で表され、Qは気体に加えた熱量、ΔUは内部エネルギーの変化、Wは外部へ与えた仕事量を意味します。気体に加えた熱量は、一部が外部への仕事に使われ、残りが内部エネルギーの変化に使われると理解できます。

(Q=ΔU+W)の場合はQ>0、W>0になりますが、W<0の場合は、Wは外部から加えられた仕事を意味し、式(ΔU =Q+W)で表されることもあります。この式では、気体に加えた熱量と外部から加えられた仕事の和が内部エネルギーの変化になると理解できます。

気体に熱量が加えられると内部エネルギーが増えることは分かりやすくても、外部から仕事を加えられると、内部エネルギーが増えることに疑問を感じるかもしれません。Q+W=ΔUは、外部からの仕事により気体が圧縮され、分子のスピードが速くなることで内部エネルギーが増えることを示しています。

熱力学第一法則が使われる場面は

熱力学第一法則は、熱を加えることで仕事をする、エネルギーを生む製品の開発には欠かせません。例えば、自動車はエンジン内でガソリンを燃焼して発生させた熱によりエネルギーを生み、ピストンを高速で動作させることで動く仕組みです。このような製品の開発や高性能化には熱力学の知識は不可欠で、熱力学第一法則は重要な公式の一つになります。

内部エネルギーとは

気体に熱量を加えたときだけでなく、外部から仕事を加えたときにも内部エネルギーが増えることは前述したとおりです。では、内部エネルギーとは一体どういったものなのでしょう。

内部エネルギーとは物体に内在するエネルギーのことで、分子の運動によるエネルギーと、分子間で働く位置エネルギーがあります。分子は熱を受けると激しく運動するため、内部エネルギーが増え、外部への仕事が可能になります。逆に外部から仕事を加えると、分子の動く空間が狭くなり激しく運動するため、内部エネルギーが増えます。固体と液体には分子間で働く位置エネルギーがありますが、気体では分子間で働く位置エネルギーを無視できます。

気体が外部にする仕事とは

シリンダーにピストンを押し込むと、空気が圧縮され、ピストンを押し戻す力が働きます。この作用が、気体が外部にする仕事のことです。ピストンを押し込むのを止めると、大気の圧力と均衡の取れる位置まで自然に移動します。その状態でシリンダー内の空気に熱を加えると、内部エネルギーが増え膨張するため、ピストンはさらに押し戻されます。この現象をもって、気体が外部に仕事をしたこと意味します。

まとめ

熱力学第一法則は、熱力学の根幹をなす重要な公式です。熱力学には難しいイメージがあるかもしれませんが、熱を力に変えて走る蒸気機関車などに、古くから利用されてきた物理現象です。

熱力学は、機械力学、材料力学、流体力学と並ぶ機械工学における4大力学の一つで、機械設計エンジニアは習得が必須とされています。今後も、高性能でエネルギー効率の優れた製品へのニーズが続くと予測され、力学に精通したエンジニアの需要が増えることが期待されます。

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