1.3メガジュールのエネルギー発生――核融合点火の可能性を確認

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アメリカのローレンス・リバモア国立研究所LLNLの研究チームが、世界で初めて連鎖的な核融合を可能にする「点火状態」を実現した2021年8月8日の実験について、プラズマ閉じ込めの装置設計や点火確認の科学的データなどを詳細に記述した3件の査読論文を発表した。プラズマにレーザー照射することにより、ホットスポットから周囲の低温部分に燃焼を連鎖させる可能性のある1.3メガジュールのエネルギー発生に成功した実験に関するもので、論文が『Physical Review Letters』誌に1件、『Physical Review E』誌に2件、いずれも実験からちょうど1年目にあたる2022年8月8日に公開されている。

核融合反応は、水素などの軽い原子核同士の融合によって膨大なエネルギーを発生する原子核反応だ。その実現条件として、重水素や三重水素などのプラズマ温度を1億度以上とする、体積1cm3の中に原子核が100兆個以上あるような高密度プラズマを得る、プラズマ閉じ込め時間を1秒以上とする、など、いわゆる「Lawson criterion(ローソン条件)」を満たす必要があるとされている。

これを達成することで、レーザー照射によるホットスポットから、周囲の低温プラズマ部分に連鎖的な自己発熱が引き起こされ、投入エネルギーを超える充分なエネルギー出力が生成される「点火状態」になる。

LLNLの核融合実験点火施設NIFでは、プラズマの慣性閉じ込めやターゲットカプセルを包む空洞壁を利用した間接加熱に関する長年の研究を経て、サッカー場3面相当の大規模なレーザー装置群から、約2mm径のカプセル内にある重水素と三重水素のプラズマにレーザー照射し、2021年8月8日に1.3メガジュールの核融合エネルギーを生成することに成功した。

その後1年をかけて測定データおよびシミュレーション結果を詳細に解析し、ローソン条件との対比を行った。その結果、1.3メガジュールの出力は投入レーザー入力の72%であり、純粋に臨界状態に達しているとは言えないが、カプセル単位で考えると100%を優に超えるカプセルゲインが得られていた。2021年以前の結果と比較すると、ホットスポットにおける生成エネルギーは約3倍、プラズマ圧力は約2倍、プラズマ質量は約2倍になっていたこともわかった。

このようなことから、周囲の低温プラズマ部分に連鎖的な燃焼伝播を引き起こす条件に近づき、幾つかの観点でローソン条件を満たしていることが明らかになった。更に、ホットスポットにおけるエネルギー生成の再現性についても検討した結果、レーザー照射条件やターゲットになるプラズマ状態の変動に敏感であることも把握したが、どのような場合でも100%を超えるカプセルゲインが得られることを確認した。

「実験的に点火状態の可能性が確認できたことは、核融合研究において大きな節目となり、核融合エネルギー実現に向けて新たな段階の幕開けになる。記録達成過程におけるデータ蓄積および詳細な要因分析をベースとして更に進歩できる」と、研究チームは期待する。

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