東京理科大と岡山大、単体半導体テルルに電流を流すと磁石になることを発見

右手型半導体テルルの結晶構造

東京理科大学と岡山大学の研究グループは2017年10月16日、単体元素テルル半導体に直流電流を流すと、非磁性体であるテルルが磁化することを発見したと発表した。

物質の磁気的性質を電気的に制御する電気磁気効果が、スピントロニクスなどの次世代技術との関係で注目されている。しかし非磁性の半導体における電気磁気効果は、微細加工を施したデバイスや物質の表面では確認されているが、バルク結晶においては決定的な証拠は見つかっていなかった。

今回同研究グループでは、単体半導体テルルに電流を流し、電流が流れている間テルルが磁化していること、核磁気共鳴(物質中の原子核の共鳴現象を観測して電子の運動を調べる手法)により発見した。単体半導体テルルは、らせん構造からなる特殊な結晶構造を持ち、結晶構造を鏡に写したときに自分自身と重ならないキラル(カイラル)という特徴がある。また、テルルは原子番号が52番目と重く、電子の軌道運動と電子のスピン間の相互作用(スピン軌道相互作用)が強いという特徴を持っている。

この2つの性質を持つ物質では、電子が結晶中で動く方向に応じて、磁化のミクロな起源である電子スピンの方向が決まるという性質がある。電流を流さない場合は、電子の運動方向がバラバラでスピンの向きにも偏りがなく磁化は生じない。電流を流すと、電子の運動方向に偏りができるため、スピンの向きにも偏りができ、結果として結晶全体が磁化する。今回観測された電流によって誘起された磁化は、このようなテルルが持つ特有の性質によるものだと考えられるという。

同研究グループは、今回の発見は非磁性体におけるバルク電気磁気効果という新しい学術分野の発展につながるものだとし、将来的にスピントロニクスなどの発展へ寄与することが期待されるとしている。

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