山梨大とNEDO、燃料電池向けの非フッ素系電解質膜の開発に成功――初期発電特性は現行のフッ素系電解質膜と同等

山梨大学と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年10月26日、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell 、PEFC)向けの高性能な非フッ素系電解質膜の開発に成功したと発表した。2025年以降の燃料電池自動車(FCV)の本格普及期に求められる、燃料電池用電解質膜の設計指針への貢献が期待できるという。

水素と空気中の酸素(供給ガス)を触媒上で反応させて、水を生成する際に発生するエネルギーを電力に変換する燃料電池は、エネルギーや環境問題解決の観点から注目を集めている。PEFCは家庭用燃料電池(エネファーム)やFCVとして実用化されている。このPEFCで用いられる電解質膜は、主にフッ素系電解質膜が広く利用されているが、供給ガス透過性、環境適合性、コストなどが課題となっている。これらの課題を克服する新たな電解質膜として構成元素にフッ素を含まない炭化水素系電解質膜の可能性が検討されてきたが、性能と耐久性を同時に両立する非フッ素系電解質膜はこれまで存在せず、燃料電池への応用は困難だと考えられてきた。

今回、研究チームは耐久性に優れる炭化水素系高分子のポリフェニレン構造に着目。分子レベルで組成比を最適化することにより新たなポリフェニレン電解質(SPP-QP)を合成し、これが透明で柔軟な薄膜を形成し化学耐久性にも優れることを発見した。酸化安定性を評価する手法であるフェントン試験を実施した結果、従来の炭化水素系電解質膜と比較して、酸化に対して非常に安定であることが確認できたという。また、SPP-QP電解質膜を燃料電池に搭載した場合の初期発電特性は、現行のフッ素系電解質膜と比較して同等としている。

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