九州大学は2017年11月2日、長期にわたって安定的に動作するIoT分子センサ(化学物質を検出するセンサ)を開発したと発表した。この分子センサを用いて人の呼気や大気中に含まれる化学物質のモニタリングをスマートフォンなどで行い、その情報をビッグデータとして活用することで、病気の予防・早期発見などの健康管理や環境負荷物質の測定・抑制などへの応用展開が期待できるという。
現在、スマートフォンなどの携帯機器で収集できるデータは、電子情報、位置、加速度(角速度)、温度などの物理的な情報が中心となっている。これらに加えて人の健康状態や、大気汚染など周囲の環境に関連する化学物質に関する情報の収集が期待されているが、携帯機器に搭載できるような従来の分子センサは長時間の動作で性能が劣化してしまい、大規模データの収集が難しいという問題があった。そのため、長期間の動作に耐える分子センサ技術が求められていた。
今回、九州大学先導物質化学研究所の柳田剛教授らの研究グループは、ナノサイズの分子センサから電気信号を取り出す部分に、従来の金属の代わりに分子センサ部分と同じ材料である酸化物を用いることを提案し、酸化錫ナノワイヤによる長時間の安定したセンサ信号が得られることを実証した。同研究グループは「今回は数百から千時間程度の動作での安定性を実証した。最終的にはセンサを使用する人が一生涯買い換えずに済むように、100年程度の使用にも耐えられるように更に研究開発を進めていきたい」としている。