分子科学研究所は2020年2月10日、東京農工大学と共同で、結晶化した有機顔料を10μmまで厚くしても、有機薄膜太陽電池の光電変換層としてほとんど効率を落とさずに利用できることを発見したと発表した。
有機顔料を混ぜて光電変換層を作製すると電気抵抗が大きくなるため、実用的な厚さはnmオーダーに限られていた。有機顔料に代わる有機高分子を用いた有機薄膜太陽電池では数100nmを超えることも多いが、1μm近辺での正常な動作例はこれまでほとんどなかった。また、厚さが増すと吸収できる光の量が増えることから、発電できる電流が増えるはずだが、その関係を明確に示すこともできなかった。
長年有機薄膜太陽電池用の有機顔料の研究開発で用いられてきた材料であるフラーレン(C60)とフタロシアニンの組み合わせは、従来厚さ40~50nmを超えると効率が落ちてくる。
今回の研究では、上記の有機顔料を混合しながら直径100nm程度の適切な大きさで結晶を成長させることで10μmまで厚くしても効率がほとんど落ちないことを発見した。また、40nm~1μmの幅広い厚さで、有機顔料が吸収した光と発電した電流が対応して増えていく関係を実証した。
今回の研究開発によって今後、結晶の利点を生かした設計による有機光電変換素子に対する研究開発の促進が期待されるという。