東京大学、京都大学および物質・材料研究機構は2017年11月28日、リチウムイオン電池などに使用できる消化機能を備える有機電解液を開発したと発表した。
二次電池の高エネルギー密度化を目指したリチウムイオン電池のさまざまな研究が現在行われている。しかし一方で、可燃性の有機電解液に起因するリチウムイオン電池の発火事故が二次電池の市場拡大の阻害要因となっている。また、電気自動車やスマートグリッド用電池には10年単位の長寿命が要求されており、現在の携帯機器用電池技術では対応できないという課題がある。
従来の一般的な商用有機電解液は、引火点が40℃以下の引火性液体だが、今回開発した電解液は難燃性の有機溶媒と電解質塩のみから構成され、引火点そのものを持たない。さらに200℃以上になると発生する蒸気が消火剤として働くことで、電池が発火するリスクを広範囲で積極的に低減できる。この消化機能は、今回開発した有機電解液が難燃性の有機溶媒と電解質塩のみから構成され、可燃性の炭酸エステル系溶媒を全く含まないことで実現された。
これまで負極の安定のためには炭酸エステル系溶剤が必須とされてきたが、今回開発した有機電解液中では、リチウムイオン電池およびナトリウムイオン電池用の炭素負極1000回以上、時間にして連続1年以上劣化しないことが分かっており、長期間でも安定して繰り返し充放電が可能だ。
今回の開発によって、二次電池の発火や爆発事故の原因とされてきた有機電解液が、逆に消化機能として働くことが示され、従来課題であった二次電池の高エネルギー密度化/大型化と安全性の両立が可能になるという。また、長寿命化の可能性があることから、電気自動車やスマートグリッド向けの新型二次電池の開発が加速されるという。