水のしずくで140V――液滴で発電するマイクロ発電機を開発

香港城市大学を中心とする研究チームが、落下する液滴の運動エネルギーから効率的に発電する技術を開発した。テフロンPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の薄膜を用い、液滴との摩擦から生じる瞬間電力を、電界効果トランジスター(FET)に似た構造で効率良く取り出すもので、研究成果は2020年2月5日の『Nature』誌に公開されている。

液滴が固体表面に衝突するときや、液体が永久分極するエレクトレット材料と摺動するときに、接触帯電や静電誘導などの摩擦電気効果によって、固体表面に瞬間的な電荷が発生することが知られている。この現象をマイクロ発電に利用しようとする試みにおいて、表面で発生する電荷量を蓄積し、外部に電力として取り出すことが難しく、エネルギー変換効率は極めて低いという課題がある。エレクトレット材とは、電場を自ら帯びており、電界が存在しなくても素材の表面近傍に電荷を保持できる荷電体材料のことだ。1919年に海軍大学校の江口元太郎氏によって発見され、磁石との対比で電石とも呼ばれてきた。

今回、香港城市大学、ネブラスカ大学リンカーン校、中国科学院北京ナノエネルギー・ナノシステム研究所から成る研究チームは、液滴の落下を利用した発電機の開発にチャレンジし、その結果、非常に高いエネルギー変換効率と瞬時電力密度を得ることに成功した。

この開発には、二つの新しいアイデアがある。第一は、エレクトレット現象を示すPTFEに連続的に液滴を衝突させると、これまでにない高密度の表面電荷を蓄積し保存できること。エレクトレット材料の中でも、PTFEは高い電荷保持性能を有し、安定した表面電位を持つ。第二は、酸化インジウムスズ(ITO)電極、その上に蒸着されたPTFE薄膜、そしてアルミニウム電極から構成される、電界効果トランジスター(FET)に似た独特なデバイス構造を考案したことだ。落下する水滴がPTFE/ITO表面に衝突して拡がると、自然にPTFE/ITO電極とアルミニウム電極をブリッジして閉ループ回路を構成し、外部に電力を取り出すことができる。このデバイスを並列配置することで、全体として連続的な電力出力が可能になる。

開発されたデバイスは、1m2あたり50.1W という、従来の類似デバイスより1000倍も高い瞬時電力密度を得ることができる。研究チームは「100μLの水を15cmの高さから落下させることで、140V以上の電圧を発生できる。これは100個のLED電球を点灯できるものだ。雨滴から発電が可能になれば、石油や原子力に代わるサステナブルな発展が実現できる」と期待している。

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