~ 自動車業界の技術トレンドを各分野から見る ~
本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・北村 喜代憲氏、陣内 健志氏への取材記事です。自動車業界の技術トレンドについて、機械系・電気系・ソフトウェア系・化学系といった専門分野別に考え、エンジニア市場の変化、求められるマインド・専門性などのエンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。(執筆:中嶋嘉祐)
――本日は自動車業界における機械系エンジニアの動向をテーマに話を聞かせてください。
自動車業界では、ヨーロッパを中心に、ガソリン車から電気自動車(EV)へと移行する「EVシフト」をメーカー各社が打ち出すようになっています。
EVシフトが進むことで、ガソリンエンジンの開発に取り組むエンジニアのキャリアの先行きは、どうなってしまうのでしょうか?
[メイテックネクスト 陣内健志氏]確かにIT系エンジニアの求人数が増えるなど、EVシフトの影響は出始めているように感じます。
ただその一方で、「機械系エンジニアの求人数が減っている」わけではありません。逆に増加傾向にあります。
恐らく自動車メーカー各社は、EVシフトを進めつつも、ガソリン車やハイブリッド車が市場で必要とされ続けると考えているのだと思います。
各社はこれまでどおり、エンジン関連の技術を研ぎ澄ましていくでしょう。少なくともこの先5~10年は、EVシフトによってエンジン開発に携わるエンジニアが職を失うようなことはないはずです。
実際、マツダは東京モーターショー2017で次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を披露しました。マツダは今後、少なくとも中期的にはエンジン開発を継続していくことは間違いありません。
エンジンに必要な要素技術=機構・熱・流体。この3つのニーズはなくならない
――なかなか10~20年先を予測することは難しいとは思いますが、それでも将来的にエンジン開発のプロジェクトがなくなってしまった場合、携わっているエンジニアはどのような分野で経験を活かせるでしょうか。
[メイテックネクスト 北村喜代憲氏]エンジン開発に携わっているエンジニアが持っている要素技術を考えますと、大きく3つあると思います。
1つ目は機構、機械の動き方が分かる。2つ目は、ガソリンエンジンは発熱量が大きいので熱の扱い方が分かる。そして3つ目は、ガソリン燃料という流体の制御方法が分かる。エンジン開発に携わるエンジニアなら、この3つのどこかに必ず強みを持っています。
機構、熱、流体。この3つの要素技術は、業界を問わず、非常に必要とされる技術です。将来、自動車業界の外に出ようと考えたとしても、いくらでも選択肢は出てくるでしょう。
ただ、1つだけ気をつけることがあります。それは製品のサイズ感です。いきなりエンジンからスマートフォンの開発者に転身したとしたら、勝手が違うところばかりです。ある程度、製品のサイズ感が近い分野で、自身のキャリアを考えていただきたいです。
とはいえ、自動車業界でEVシフトがこのまま進んだとしても、モーターも発熱しますし、モーターの動力を効率的に伝える機構を考える必要もあります。自動車に載せるエアコンにしても、冷媒として流体を使っています。
同じ自動車業界の中でも、機構、熱、流体という要素技術を必要とするプロジェクトはいくらでもあります。要素技術さえしっかりと身に付けている機械系エンジニアなら、スキルを活かせるシーンはこの先も多いです。必要とされるプロジェクトは、今後ますます増えていくのではないでしょうか。
北村 喜代憲(メイテックネクスト 機械・メカトロ分野 コンサルタント)
消費財メーカーで生産管理のエンジニアとしてキャリアをスタートしたものの、転職活動の中で、転職の可能性の大きさへの期待や、その逆の不安など様々なこと感じる。その経験を活かして現職に至る。
陣内 健志(メイテックネクスト 機械・メカトロ分野 コンサルタント)
約6年間、自動車部品メーカーにて生産技術職を担当し、主に国内及び海外向けの生産設備の立上に従事。ものづくりの大変さと面白さを学び、その経験を活かしてエンジニア目線でのキャリアサポートをしたいと考え、現職に至る。