230℃までの高温域で使用できる――産総研、耐久性と経済性に優れた耐熱Oリングを開発

産業技術総合研究所(産総研)は2018年2月8日、フッ素ゴム(FKM)とスーパーグロース法で作製した単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を複合化して、耐久性と経済性を兼ね備えた耐熱Oリングを開発したと発表した。

これまで150℃から200℃までの温度域では、シール部材として連続使用温度が200℃程度である耐熱性のフッ素ゴム(FKM)が選ばれ、200℃を超える高温域では、ゴムでは唯一、連続使用温度が280℃程度の特殊なフッ素ゴム(FFKM)が選ばれてきた。しかし、FFKMの価格がFKMの5~10倍以上という欠点があるため、FKMの連続使用温度を10~20℃向上させるなどして、少しでも高価なFFKMから安価なFKMに置き換えたいという強いニーズがあった。

産総研は、2017年からCNT複合材料研究拠点を設立し、企業と連携してCNT複合材料を利用した耐熱Oリングの実用化を目指した開発を行ってきた。今回、SGCNTと最適な組み合わせのゴムの種類や、ゴムの架橋構造を選定することで、求められる耐久性や耐薬品性を実現した。

開発した耐熱Oリングは、SGCNTによって初期の強度が向上するだけでなく、高温下で長時間使用した場合でも230℃での強度を保持するという。安価なFKMをベースにしているため、FFKMをベースにした耐熱Oリングの連続使用温度には及ばないものの、230℃における強度および引裂強度はFFKMベースの市販品よりも優れており、長時間の高圧環境下でも市販のCB配合FKMと同等のシール性を保持できる圧縮永久ひずみを示したという。

さらに企業と連携して、ゴム中でのCNTの分散と凝集を制御した混練プロセスを開発し、加えて安価なマスターバッチの利用や、ゴムを成形加工する際の条件の最適化、金型設計などでの歩留まり向上も実現した。さまざまな耐熱Oリングの低コスト量産プロセスの開発によって、検討開始前に比べて製造コストが1/2以下になり、高価なFFKMに比べて優れた経済性を実現できたとしている。

今後はこの成果を企業に技術移管し、2018年9月に耐熱Oリング製品を販売予定だ。さらに、移管先企業による耐熱Oリング販売に先立ち、CNT複合材料研究拠点から顧客評価用のサンプル提供を開始するという。この技術は、2018年2月14日~16日に東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2018 第17回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」で展示される。

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