理研ら、従来より約100倍明るいX線レーザービームを作り出す新技術「ハーモニックセパレーター」を開発

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理化学研究所(理研)と高輝度光科学研究センター(JASRI)の共同研究チームは2018年3月1日、新しいX線光学技術「ハーモニックセパレーター」を開発し、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」において、従来よりも100倍明るいX線レーザービームを作り出すことに成功したと発表した。今後は、この光学技術をXFELや次世代放射光と組み合わせることで、X線計測の飛躍的なハイスループット化や高速化の実現が期待できるという。

ドイツの物理学者レントゲンによる1895年のX線の発見以来、科学者たちはより明るい高強度なX線を求めてさまざまな光源を開発してきた。約60年前に、放射光をX線光源として利用し始めたことを転機に、放射光X線光源はさまざまな改良や進化を重ね、その明るさを飛躍的に増大させてきた。

大型放射光施設「SPring-8」などでは、光源から出射されたX線を、分光器を通すことによって、特定の波長のX線のみを抽出(単色化)して実験を行う。多くの放射光施設では、2枚のシリコン結晶からなる2結晶分光器によって、バンド幅が0.01%程度のX線を切り出して実験に使っている。一方、SACLAなどのXFELや次世代放射光源といった先端のX線光源では、ある特定波長とその近くの波長のX線が強く放射され、各波長のバンド幅は元の1%で済むという長所があり、2結晶分光器を使った場合と比較して約100倍強いX線を実験に用いることができる。

今回、共同研究チームは、全反射ミラーとX線プリズムを組み合わせたハーモニックセパレーターという光学技術を考案した。この方法ではまず、X線を全反射ミラーに入射して、抽出波長よりも短波長のX線を取り除く。さらに、プリズムを通した後にスリットを使って、抽出波長よりも長波長のX線も除去することで、分光器を通すことなく特定波長のX線を抽出することに成功した。

この光学技術を使って研究チームは、SACLAから放射された光子エネルギーが10keV(波長約0.124nm)のX線レーザーから、2次高調波の20keV(同約0.062nm)や3次高調波の30keV(同約0.041nm)のX線レーザーの抽出を試みた。その結果、分光器を使った従来のSACLAの高調波X線レーザービームと比較して、約100倍の強度の高調波X線レーザービームを作り出すことに成功したという。

この光学技術をXFELや次世代放射光に導入すれば、2結晶分光器を用いる従来の手法と比較して2桁以上明るいX線を利用できるようになり、X線計測の飛躍的なハイスループット化・高速化が期待できるという。また、ハーモニックセパレーターによって強度を保ったまま2次高調波、3次高調波といった高次光を抽出することで、今後はX線レーザーの高次光の利用拡大が期待できるとしている。

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