GSアライアンスは2018年4月5日、セルロースナノファイバー(CNF)、ナノセルロースを各種熱可塑性樹脂に混合した複合体マスターバッチを作り、引張強度などの機械的強度を向上させた複合樹脂を供給できる体制を整えたと発表した。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)以外の熱可塑性樹脂にCNFを複合化して機械的強度を向上させる体制を整えたのは、産業的には世界初という。
CNFは鋼鉄の5分の1の軽さでありながら、その5倍以上の強度を有するアスペクト比の高い幅4~20nmのナノ繊維だ。熱膨張係数はガラス繊維並みに小さく、弾性率はガラス繊維より高く硬くて丈夫という優れた特性がある。植物由来のため次世代の産業資材やグリーンナノ材料として注目されているが、親水性で水分を多く含んだ状態にあるため、疎水性である樹脂に均一に分散させることが非常に難しい材料でもあり、製品化に向けた応用開発が進みにくい状況にあった。
同社は、長年のナノ微粒子分散技術を応用して、CNFを樹脂中に凝集させることなく均一に分散させる技術を確立した。対象の樹脂はPE、PP、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸(PLA)、生分解性芳香族脂肪族ポリエステル樹脂など。これら樹脂へのCNF濃度は最大33.3%で、現在さらなる高濃度品も検討中だという。例えば、PEの引張強度は約10.5N/mm2だが、33.3%のCNFを複合化することにより引張強度は約24N/mm2となる。
さらにPLAなどの生分解性樹脂に、同じく生分解性素材であるCNFを混合することにより、引張強度を向上させたことは非常に有意義であるという。これまでガラス繊維などを用いたPLAの機械的強度の向上は可能だったが、ガラス繊維などは生分解性素材ではないため環境汚染の原因になりえていた。今回の技術により海洋のマイクロプラスチックなどの環境問題を解決する糸口の一つになる可能性があるという。またCNFを混合することで、PLAの弱点である低い耐熱性の改善も可能としている。