繊維径20μmでも高い耐摩耗性――高性能液晶ポリエステルモノフィラメントを開発 東レ

細繊度と耐摩耗性を両立したLCPモノフィラメント(スクリーン印刷用メッシュ織物に使用されているポリエステル繊維との比較) 

東レは2018年4月11日、繊維径20μmという細繊度でありながら、高い耐摩耗性を実現した高性能液晶ポリエステル(LCP)モノフィラメントを開発し、その製糸技術を確立したと発表した。高い強度や弾性率といったLCP繊維の優れた機械特性を維持しており、同社ではハイメッシュ織物用素材として、スクリーン印刷用メッシュ織物向けを中心に展開していく計画だ。

近年電子部品やタッチパネル用途でスクリーン印刷の適用が広がり、版材として使用するメッシュ織物には細繊度の素材によるハイメッシュ化が求められている。従来、メッシュ織物にはステンレスやポリエステル繊維が使用されてきたが、細繊度化するとステンレスでは寸法安定性が低下し、ポリエステル繊維では強度や弾性率などが不足するという課題があった。

LCPモノフィラメントは、機械特性に優れ、かつコスト優位性のある溶融紡糸が可能なハイメッシュ織物用素材として注目されている素材だ。しかし製織工程においてフィブリル化(小繊維が表面から剥離する状態)が生じやすく、耐摩耗性が低いという問題があった。LCPモノフィラメントに耐摩耗性を付与するには、柔軟なポリマーを鞘部に使用する複合紡糸技術による方法があるが、複合繊維とした場合は細繊度化が困難となる。

今回東レでは、細繊度化に有利なLCP単一成分のモノフィラメントで耐摩耗性の向上に取り組み、LCP繊維のフィブリル構造解析から、ポリマーの結晶化がフィブリル化の原因の1つであることを突き止めた。LCPは、ポリマーが結晶化することで高い強度を発現するが、結晶化の進行とともにフィブリル化しやすくなる。そこで東レは、結晶化を制御する独自の製造プロセスを開発し、機械特性を維持したままフィブリル化を抑制。単一成分でも十分な耐摩耗性を実現した。単一成分のため製糸性にも優れ、モノフィラメントとして世界最小レベルだという繊維径20μmを達成した。

東レは長年LCP樹脂事業を展開しており、LCPマルチフィラメントの開発にも取り組んでいる。今後は、今回開発したLCPモノフィラメントを加え、スーパー繊維であるLCP繊維のラインナップを拡充していくとしている。

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