日立金属は2018年4月17日、日立製作所と共同で金属3Dプリンター(金属積層造形)に適した金属粉末を開発、これを用いた金属3Dプリンターのプロセス条件を見出し、ハイエントロピー合金「HiPEACE」の造形に成功したと発表した。
近年、金属材料を用いた3Dプリンターの研究開発が活発化しており、造形品質の向上に伴い航空機エンジン部品やガスタービン部品、自動車部品などへの適用が進んでいる。また、ステンレスやニッケル基合金、アルミニウム合金などの既存材料だけでなく、3Dプリンターの特徴を活かした新しい材料の開発も進んでいる。
日立金属は、同社がこれまで培ってきたCAE解析技術を用いて材料の特性や変形を検証し、加えて金属3Dプリンターの特性に合わせることで、金属3Dプリンターに適した金属粉末を開発した。
金属粉末は、真空ガスアトマイズ法を用いて、同社の安来工場(島根県安来市)で生成。これを用いた積層造形では、粉末層を局所的に溶融、凝固させることでハイエントロピー合金の造形に成功した。ハイエントロピー合金は、5種以上の元素が同程度含まれる合金で、過半を占める主要元素が存在しないことが特徴だ。強度と耐食性に優れるが、鋳造性や加工性が難しいとされている。
この金属粉末から得られた造形物は、高い強度と延性、耐食性を持ち、既存のニッケル基合金よりも過酷な環境下で使用できる可能性があるという。同社は今後、実証実験を進めて実用化を目指すとしている。