アメリカのジョージア州立大学が2018年4月9日、年収6万ドル(約646万円)未満のカップルが結婚した場合にはうつ症状が軽減される、つまり結婚によってより幸せになれるという研究成果を発表した。
アメリカには1986年から実施されている「アメリカの変化する生活における調査」という全国規模のインタビュー調査がある。24~89歳の3617人を対象とした同調査のデータを基に、ジョージア州立大学の研究は行われた。社会的要因、心理学的要因、そして精神面や健康面の調査項目が含まれるデータを、独身者、既婚者、年数の浅い既婚者からの回答を抽出して分析したのだ。
論文共著者のBen Lennox Kail准教授は、「結婚、収入、うつ症状の関係性を調べたところ、うつ症状の軽減というメリットを得るのは、年収が平均的かそれ以下の夫婦だということが分かった」と語った。
なお、ここで言う「うつ症状」とは、病院にかかるほど重いものではなく、日常で無意識に感じるレベルのうつ症状を指している。しかし軽度ではあっても、個々人の健康や幸せに影響を及ぼすレベルだという。
データ分析の結果、年収6万ドル未満の場合、既婚者は未婚者よりもうつ症状が少なくなることが示された。一方で、年収6万ドル以上の既婚者には結婚とうつ病の相関性はなく、結婚していてもうつ症状が少なくなるという精神面のメリットは得られないという。さらに、1度も結婚経験のない年収6万ドル以上の未婚者は、年収6万ドル以上の既婚者よりもうつ症状が少ないことも示された。
まとめると、年収6万ドル未満の場合は既婚者の方が未婚者よりも幸せを感じていることになり、逆に年収6万ドル以上の場合は、未婚者の方が既婚者よりも幸せを感じることになる。
この研究は、収入や社会的支援などといったリソースを共有できるので、結婚には健康面の利益があるのだという「marital resource model(結婚リソースモデル)」と呼ばれるモデルを支持するものになる。つまり、年収6万ドル未満の夫婦は、結婚によって経済的安定性と自己効力感の向上につながる。逆に年収6万ドル以上の場合には、結婚しなくても個人が既に十分なリソースを持っているので、結婚による利益を感じられないのだろうとKail准教授は分析した。
この研究成果は『Social Science Research』に論文「Socioeconomic variation in the association of marriage with depressive symptoms」として2018年1月3日に掲載されている。
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