使われなければ意味がない、エンジニアは使ってくれる人のことを考えながら開発と向き合うことが大事――PR TIMES 山田和広氏

プレスリリース配信サービスを提供するPR TIMESのエンジニア山田和広氏は、同社サービスのブラッシュアップや新機能の開発など、サービスの根幹を支えている。直近では、AIを活用した新たなサービスも立ち上げた。

常に笑顔で穏やかな語り口ながら、開発はもちろん、プレゼンでも、ワークショップでも、突然受付に訪れたお客様の対応でも、「できることは、何でもやる」。そんな山田氏が考えるエンジニアの姿や原動力などについて聞いた。(執筆:杉本恭子、撮影:水戸秀一)

――大学では環境情報学部だったそうですが、どのような学部なのですか。

「環境」とは自然環境だけでなく、人を取り巻くあらゆる環境を指していて、広い分野を勉強できる学部です。例えば私はゼミで「メディア論」を選びましたが、メディアも環境の1つです。人の生活を豊かにしたり、快適にしたりするソフトウェアやアプリも環境の1つとして位置付けています。

高校時代は理系コースではありませんでしたが、大学の授業の中で、HTMLでちょっとしたプログラムを作ったのが、私のプログラマーとしての第一歩でした。

映画で特に好きなのは「スター・ウォーズ」。公開初日の深夜上映も観に行ったとか

――PR TIMESは3社目とのことですが、これまでどのような仕事をしてきましたか。

最初の就職先はWeb制作会社でした。エンジニアという肩書ではありませんでしたが、受託した企業のWebサイトなどを作成しました。

2社目は、映画の宣伝会社です。私はもともと映画が好きで、映画に関連する仕事にもずっと興味がありました。

当時の私の経験やスキルを生かせて、しかも好きな映画にかかわれる仕事だったので転職し、当時全盛だったFlashなども使って、映画の公式サイトやキャンペーンサイトを作成していました。

――好きな映画にかかわれる仕事は楽しそうですが、なぜPR TIMESに移ったのですか。

エンジニアとしての幅を広げたいと思ったからです。映画の仕事は確かに楽しかったのですが、宣伝用のキャンペーンサイトは映画の公開が終わると消えてしまいます。

もっと継続的にWebサイトの運営にかかわって利用の状況を観察し、サービスをより良くしたり、新たな機能を追加したりできるように、「自社サービスを提供している会社で仕事をしたい」と思い、フロントエンドのエンジニアとして当社に入社しました。

畑違いのAIに挑戦し「幅が広がった」

大企業の広報部はもちろん、スタートアップや町の商店など幅広いユーザーが新情報を発表しやすいサービスを追求している

――現在どのような仕事をしていますか。

当社の事業の中心であるプレスリリース配信サービス「PR TIMES」を、入社以来、担当しています。

PR TIMESは、プレスリリースを配信したい企業などが、管理画面でリリースを編集・投稿するだけで、PR TIMESサイト(prtimes.jp)に掲載されると同時に、メディアに転載・配信できるサービスです。逆に情報を収集したい記者や編集者の方は、希望ジャンルのプレスリリースを受信できます。

おかげさまで上場企業の3割以上のお客様にご利用いただいており、PR TIMESサイトの月間ページビューも1100万を超えています。

私はこのPR TIMESの企業向け管理画面のブラッシュアップやリニューアル、またAIを活用した新しい情報収集機能「リリースAI受信」の開発などを手掛けてきました。

――「リリースAI受信」についてもう少し詳しく教えてください。

記者の方々は、膨大な情報の中から必要な情報を取捨選択しなければなりません。情報量は年々増え続け、PR TIMESが取り扱うプレスリリース本数も、月間約1万本になっています。

「リリースAI受信」は、各メディア会員のプレスリリース閲覧行動(コンテンツ別の閲覧時間、閲覧箇所、企業、業種、カテゴリ、リリース種類、キーワード、「気になる」アクション、等)をAIが学習し、マッチング精度の高いプレスリリースを表示する機能です。

関連性の低い情報は取り除く一方で、逆にこれまで出会うことが難しかった深層テーマも抽出します。ご利用いただけばいただくほど、学習が進み精度が高まります。

――「リリースAI受信」の開発ではご苦労もあったのでは。

そうですね。エンジニアとしては常に新しいものを取り入れていますが、私はもともとフロントエンドを中心とした開発を経験してきました。専門外だったAIを導入するために新しい言語を覚えたり、ディープラーニングや機械学習を勉強したり、試行錯誤しながらやってきました。

大変ではありましたが、フロントエンドだけを担当していては貢献できる範囲が限定されてしまいますから、幅を広げることができてよかったと思っています。

「リリースAI受信」は昨年の初夏から構想し、今年3月にスタートしたばかりのサービスなので、これからもどんどん成長させたいと考えています。

必要なのは、境界を超えて行動できるエンジニア

今年4月の社員総会の「PR TIMES Values AWARD」では「ベスト 成長者宣言 賞」「ベスト 当事者宣言 賞」を受賞。2部門受賞は山田氏だけ

――そのほか、ワークショップや採用の仕事もしておられるとか。

はい。ワークショップは外部の方とも協力して、例えばUXやUIなどをテーマに、エンジニアやデザイナー向けに行っています。

またサービスを広げていくためには仲間が必要なので、一昨年からエンジニアの採用も担当しています。これまで数人の方に入社していただきましたが、もっと仲間を増やしたいですね。

山田さんは、エンジニアの枠にこだわらずに仕事をしておられるようですね。

エンジニアとしての仕事もそうですが、それ以外にもできることは何でもやっていこうと思っています。

当社では「バリュー」として、行動者宣言、成長者宣言、当事者宣言など「6つの宣言、3つの秘密」を掲げています。例えば行動者宣言は「思い立ったらすぐに試行錯誤する」、当事者宣言は「自分がやるという意識で仕事に向き合う」といったことです。私自身も、会社を構成する一員として、会社の成長やサービスの向上に貢献したいと思っています。

採用する立場から見ても、エンジニアとして優秀であるだけでなく、ビジネスやサービス、マーケティングなどに広く興味を持って、境界をどんどん超えて行動していけるエンジニアと一緒に成長していきたいと思っています。

――山田さんがエンジニアとして大事にしていることは何ですか。

ものづくりをしていると、例えばすごく難しいプログラムを書いて、それが動くという満足感やうれしさを感じることはあります。でもいくら高度な技術であっても、製品やサービスを使っていただけなければ意味がありません。向こう側に使ってくださる人がいることを常に考えることが大事だと思います。

「使っていただける」ということは、やりがいでもあります。カスタマーリレーションのチームを経由して得られるお客様のニーズや、お客様の行動分析などを見て、新たな機能を加えたり使いやすく改良したりすると、実際に使ってくださる方が増える。それを数字で見ると、さらに良いものにしていきたいと思います。

例えば最近、作成したプレスリリースをPDFでダウンロードできる機能を追加しました。これも、お客様の声から生まれた機能です。プレスリリースの配信は、PR TIMESの管理者画面で編集して投稿するだけですが、それを印刷して使いたい場合には、もう1度Wordなどで書き直すことになり、手間がかかるという話を聞いたのが開発を思い立ったきっかけでした。

――では今後は、どのようなことを目標にしたいですか。

もちろんエンジニアとして、新しい技術やAIの技術力を高めたいと考えていますが、それよりもやはり、PR TIMESのサービスを成長させ、使ってくださる方を増やしていきたいです。

そのためにもっと使いやすく、便利な機能を考えていくことですね。AIももっとブラッシュアップしたいです。そういうことが当面の目標です。

小学校4年生のお嬢さんもプログラミングに興味あり。すでに子ども向けの本で勉強している

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