水流の衝突時に「マトリョーシカ」ができる――ユタ州立大が形成プロセスを解明

アメリカのユタ州立大学の研究者らは、液滴が水面に衝突した際に水中で発生する現象について説明している。静止水面に対して、液滴が非常に短い間隔で連続して衝突した際に、水面下に生じる「空洞」の形成プロセスを解明したものだ。研究成果は『Journal of Fluid Mechanics』に論文「The water entry of multi-droplet streams and jets」として、2018年4月16日に発表されている。

これまで、ジェット水流が水面に衝突する際、深い円筒状の空洞が水面下に形成されること知られている。また、連続した液滴が水面に衝突する場合にも同様の空洞が形成されるが、液滴の間隔が長いと次の液滴が衝突する前に空洞が閉じ、崩壊することが確認されている。論文の筆頭著者であるNathan Speirs氏は、「連続した液滴が水面に衝突することで、水面下に空気が引っ張られて空洞が形成されます。その空洞の形は、液滴の直径や衝突時の速度などの衝撃パラメータによって変化します」と説明する。

研究チームは、液滴が非常に短い間隔で連続して水面に衝突する際に形成される水面下の空洞を観察したところ、ボコボコと段が付いた、まるでロシアの伝統的な入れ子人形「マトリョーシカ」のようにみえる空洞が形成されることを発見した。

これは、最初の液滴が水面と衝突して空洞が作られた後、非常に短い間隔で次の液滴が衝突すると、最初の液滴が形成した空洞の中に入れ子状に空洞を形成するためだ。つまり、それぞれの液滴が、一つ前の液滴の水面との衝突によって作られた空洞の底に次の空洞を形成するため、縦に長いマトリョーシカのような段付きの空洞になる。

この研究ではこれを「マトリョーシカ効果」と呼び、マトリョーシカ効果の発生と、液滴が衝突する間隔(周波数)の関係を明らかにするため、無次元の「マトリョーシカ値」を定義している。マトリョーシカ値が1より小さければ、空洞は次の液滴が当たる前に崩壊し、1より大きければ、入れ子状の空洞が形成されるマトリョーシカ効果が起きると予測できる。

研究チームによれば、例えば水道の蛇口からの水流やトイレでの排尿が水面に衝突する際の現象を理解し、跳ね返りを減らして、よりクリーンな環境を実現するために応用できるという。また産業においては、流体力学をより深く理解することで、化学薬品や医薬品の製造法の改善も期待できるという。

関連リンク

The Matryoshka Effect: USU Researchers Describe Underwater Phenomenon

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