- 2016-7-25
- 海外ニュース, 電気・電子系
- AIP Publishing, Applied Physics Letters, ウェアラブル, 太陽光発電装置, 韓国光州科学技術院
韓国光州科学技術院の科学者チームは、普通の鉛筆に巻き付けられるほど柔軟性の高い超薄型太陽光発電装置を開発した。スマートウォッチや活動量計、スマートグラスといったウェアラブルデバイスの電源としての使用を想定している。詳しい内容は、AIP Publishing発行のジャーナル『Applied Physics Letters』で発表されている。
薄い材料は厚い材料よりも曲げやすい。1枚の紙と梱包用の段ボール紙を考えてみると、その理由が分かるはずだ。つまり、材料を曲げたときに中心面から離れた位置にあるほど、かかる応力が増大する。1枚の紙と比べると、厚紙は中心面から離れた位置に多くの材料が存在するため、曲がりにくいのだ。
「私たちが開発した太陽光発電装置の厚さは約1μm」と、光州科学技術院の技術者、Jongho Lee氏。1μmは人間の髪の毛の厚さよりもはるかに薄い。この超薄型太陽電池と比べると、標準的な太陽光発電装置は数百倍も厚く、「薄型」と言われている太陽光発電装置と比較しても2~4倍厚さが大きい。
同チームは、この超薄型太陽電池をガリウムヒ素半導体から作成した。接着剤を使用すると材料の厚さが増すため、接着剤を使用せずに柔軟性の高い基板の上に電池を直接貼り付けた。次に、170℃で圧力を掛け、仮止めの接着剤としてフォトレジストと呼ばれる最上層の材料を溶融して、基板上の電極に電池を「冷間接合」した。その後、フォトレジストを剥離し、金属-金属の直接結合を実現した。
最下層の金属は、浮遊フォトンを太陽電池に戻す反射体にもなる。同チームがこの太陽電池の変換効率を調べたところ、より厚さの大きい類似の太陽光発電装置と同等であることが判明した。また、同チームの曲げ試験によれば、電池を巻き付けられる最小半径は約1.4mmになる。
同チームが実施した数値解析によれば、厚さ3.5μmの類似の電池と比べて、この太陽電池の歪み量は4分の1に減少する。「電池は薄くなるほど、曲げたときに壊れにくくなる。また、この電池の性能はこれまでと同等か、同等以上だ」と、Lee氏は胸を張る。
厚さ約1μmの太陽電池を発表している研究グループは他にもあり、例えば基板全体をエッチングで除去するなど、異なった方法で電池を作成している。Lees氏の研究チームが開発した新しい方法は、エッチングではなく印刷技術を利用。柔軟性が非常に高い太陽光発電装置を少ない材料で作成するのに適している可能性がある。
「この薄型電池は眼鏡のフレームや衣服に組み込むことができ、次世代技術として期待されるウェアラブルデバイスの電源となる可能性がある」(Lee氏)