高純度GaN結晶の光りにくさの主要因が、従来のGaN結晶とは異なることを発表 大阪大学と住友化学

大阪大学は2024年6月7日、同大学大学院工学研究科の研究グループが住友化学と協力し、高純度な窒化ガリウム(GaN)結晶の光りにくさの主要因が、従来のGaN結晶とは異なることを発表した。GaNの光りにくさを全方位フォトルミネッセンス(ODPL)法により計測し、非破壊、非接触な手法を用いて、GaNの品質を評価している。

高効率な光や電子デバイスの開発は、持続可能な社会の実現にむけて不可欠となっている。例えば、照明や太陽光発電などの分野では、電気エネルギーと光エネルギーを相互に変換する発光ダイオードや太陽電池といった光デバイスの高効率化が求められている。優れた物性値を持つGaNは、こうした高性能な半導体デバイスの材料として大きな注目を集めている。

このGaNデバイスの性能を支配する結晶欠陥に、窒素原子を置換した炭素不純物が挙げられているが、これはバンドギャップ内に特有のエネルギー準位を形成し、光・電子デバイスの性能を低下させる。炭素不純物濃度が低くても性能低下が生じるため、炭素を高感度に検出する手法が望まれている。しかし、一般に半導体の不純物検出技術は破壊検査であったり、試料に対して電極を形成する必要があるなどの制限があった。

直接遷移型半導体と呼ばれるGaNは、外部光源などで励起されると特有の光を放出し、炭素不純物が少ないGaNほど強く発光する。このため、炭素不純物の濃度は、発光量や発光効率を指標に定量できる。一般に光計測は、短時間測定ができ、高感度だが、集光レンズの視野角に結合した光のみを検出するため、再現性に乏しい。

そこで研究グループは、積分球内に結晶を配置し、結晶から放出された光を全方位に渡って検出する手法に着目。半導体結晶の高精度な発光効率測定法であるODPL法に取り組み、応用することで、高感度かつ非破壊、非接触で高純度(低炭素濃度)GaNの炭素不純物を検出した。

炭素濃度を意図的に変化させた複数のGaN結晶に対してODPL法による発光効率測定を実施したところ、炭素を含む割合が数億分の1でわずかに変化しても、発光効率が高感度に変化した。また、炭素濃度と非発光性再結合頻度の関係を考えると、炭素を含む割合が2.5億分の1以下になると、GaNの非発光(光りにくさ)の主要因が炭素から原子空孔に切り替わることがわかった。

(a)炭素濃度と発光効率の関係
(b)炭素濃度とキャリア再結合頻度の関係。

研究の成果は、GaN結晶に光を当てるだけで微量の炭素濃度を瞬時に定量できることを示している。この技術は、GaNデバイスの信頼性向上に寄与することに加え、高純度GaN結晶の開発、製造を加速させることが期待される。

関連情報

新発見!次世代半導体GaNは高純度で光りにくさの理由が変わる – ResOU

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