筑波大ら、酸性条件下でも腐食しない卑金属電極を開発――白金電極の100分の1のコストで実用レベルの電極性能を実現

筑波大学は2018年6月20日、大阪大学と協力して、水の電気分解において酸性条件下でも腐食しない卑金属電極を開発したと発表した。

水素は再生可能な次世代エネルギー源として注目されており、とりわけ化石燃料由来ではないエネルギーを使用して水素を製造する方法の確立が望まれている。その一つの方法である水の電気分解では白金電極が用いられているが、コストや希少性の面から卑金属を用いた代替材料の開発が急務となっている。しかし、卑金属は酸性条件下での腐食の問題があり、その実現は困難だった。

貴金属代替材料開発においては、卑金属電極をグラフェン膜で覆うという方法が検討されている。これまでの研究で、10層以上のグラフェン膜で覆った卑金属電極は腐食しないが水素発生能力が大幅に落ち、また1層のグラフェン膜で覆った卑金属電極の水素発生能力は優れているが、すぐに腐食することが確認されていた。

同研究グループは、10層程度のグラフェン膜に部分的にナノサイズの穴を空け、卑金属と水素イオンの最小限の化学反応場を提供すると同時に、腐食も防ぐことのできる構造体を作成した。これにより、グラフェン膜の穴の空いた部分では水素が発生し、グラフェン膜で覆われている部分は腐食せず電極として維持させることが可能となった。しかし、卑金属と酸が直接接触している部分からの腐食を完全に抑えることはできなかった。

今回の研究では、ニッケルモリブデン卑金属多孔質合金の表面を、炭素原子3~5層の非常に薄いグラフェン膜で覆うことにより、酸性条件下でも腐食から保護し、同時に電極性能を保持できることを明らかにした。この卑金属電極は、水の電気分解において実用化に必要な性能値である、単位面積当たり0.2Aの電流値を1週間保持することに世界で初めて成功した。

今回作製した腐食しない卑金属電極は、白金電極の100分の1のコストで作製できるうえ、グラフェン膜の厚みを制御することで酸性条件下でも卑金属の性能を引き出せることから、種々の貴金属代替材料開発への応用が期待できるとしている。

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