大気中の二酸化炭素から直接燃料を作り出す製造プロセス

アメリカのハーバード大学応用科学工学科のDavid W. Keith教授は、大気中の二酸化炭素から直接燃料を精製する技術を利用したパイロットプラントの運用を成功させ、費用対効果の高いコストを達成できることを発表した。温暖化が進む地球で、二酸化炭素排出量の削減に貢献する技術として大きな期待が寄せられる。研究成果は『Joule』に論文「A Process for Capturing CO2 from the Atmosphere」として2018年6月7日に発表されている。

Keith教授は、2009年に同僚らとCarbon Engineeringを設立した。同社では、二酸化炭素を排出しない輸送に利用できる高エネルギー燃料の生産のため、大気中から二酸化炭素を直接取り込み利用する技術開発を目標としていた。

今回、Carbon Engineeringで二酸化炭素の取り込み費用を算出しあっところ、1トン当たりの二酸化炭素取り込み費用が94~232ドルだと推定した。2011年には1トン当たりの二酸化炭素の取り込み費用は1000ドル近くとされ、実用化するにはコストがかかり過ぎていた。その上、空気中に存在する二酸化炭素は大気の0.04%に過ぎないため、大量の二酸化炭素を取り込むことの正確な経済分析と実質的なエンジニアリングデータが必要とされていた。

Carbon Engineeringが想定する産業プラントでの回収プロセスでは、カルシウムループと結合した水溶性水酸化ナトリウム溶媒使用したプロセスにより、年間1万トンの二酸化炭素回収を見込む。今回化学・石油業界向けのプロセスシミュレーター「Aspen」を使い、エネルギーと物質の収支計算をしたところ、二酸化炭素が15MPaで供給される場合、二酸化炭素1トン当たり8.81GJの天然ガス、あるいは5.25GJのガスと366kWhr(キロワットアワー)の電力が必要なことが分かった。これにより大気から回収する二酸化炭素1トン当たりにかかるコストは、これまでの想定よりも少ない94〜232 ドルと見積もることができた。

大気中の二酸化炭素の直接取り込みは、巨大なファンを利用して周囲の空気を水溶液と接触させる方法を用いている。溶液との接触により空気から二酸化炭素を取り出し、さらに加熱や一般的な化学反応を通じて二酸化炭素を再抽出し、液体燃料として利用できる化学物質を生成する。

Keith教授とCarbon Engineeringは、これまで約3,000万ドルの資金調達に成功している。次のステップでは、再生可能エネルギーのよる電力供給や、低炭素燃料へのインセンティブを必要とする電力供給者を見つけ、産業レベルでの工場建設資金を調達することを目指している。

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