中部大学は2018年7月23日、過重力下において運動学習能力が高まることを実験で確認したと発表した。同大学工学部ロボット理工学科の平田豊教授らの研究グループによるもので、人気アニメ「ドラゴンボール」に地上よりも重力が大きい修行場所(精神と時の部屋)が登場するが、その効果が実証されたという。
実験では、重力と遠心力によって合計2Gの重力加速度を体軸方向に付加できる過重力付加装置を使用。過重力下において視界が左に約17度ずれるプリズムゴーグルを装着して、タッチパネル上に赤い円で示される指標を正確に指差す訓練を実施した。最初は装着したプリズムの影響で指差す位置が左にずれるが、徐々に正確に位置を指せるようになる。
実験の結果、通常の1Gでは正常な位置を指すまでに約60回要したが、2Gの環境下では約20回まで短縮。4名の被験者全員で同様の結果が得られた。
人に先立って実施した金魚での実験でも、同様に重力加速度を1Gから1.5Gに高めることで視線移動後の目の動きが早くなるという、視覚環境への適応の早さが見られた。また過重力の代わりに明るい視覚環境下でも同じような効果が得られることから、重力や視覚などの定常的な環境刺激の増加が、それらの信号を受け取る小脳におけるシナプス可塑性を促進しているのではないかと研究グループは見ており、確認のための神経生理学実験を実施している。
研究グループでは、今回の実験結果が、運動能力を身に付けるための効率的な練習環境を整える参考になると考えている。また、今後運動の学習能力に対する重量と明るさの関係を詳しく調べることによって、過重力で実現できるような運動学習能力の向上が、より簡便な明るさの調整で再現できることが期待されるという。