成功した人には、キャリアのベスト3が集中して起きる絶好調な時期があった――。米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のDashun Wang准教授が、そのように分析した研究成果を発表した。
例えば、アルベルト・アインシュタインの成功は、「奇跡の年」とも呼ばれる1905年の3月から6月の間に発表された3本の重要な研究論文が礎になっている。これら3本の論文から、宇宙や時空間についての理論や量子物理学への道が切り開かれた。
Wang准教授は、先行研究で1万人以上の研究者の成功へとつながる重要な科学論文が、その生涯のどのタイミングで発表されたかを調べ、完全にランダムで起きていたことを実証する論文を発表している。
今回の研究では、いくつかの分野での成功者が調査対象。アインシュタインのように成功へとつながるような絶好調な時期を体験しているのかどうかを調べた。研究成果は『Nature』に論文「Hot streaks in artistic, cultural, and scientific careers」として2018年7月11日に発表されている。
分析対象となったのは、2万人以上の科学者、約3500人の芸術家、約6200人の映画監督のキャリアだ。最初に得られた結論は、Wang准教授の先行研究と同様に、絶好調な時期というのはキャリアにおいてランダムに起こり、いつ起きるか予測できないということだった。
研究チームは、調査対象者のキャリアで重要となるベスト3のイベントに注目。そのイベントが起こる相対時期を算出した。「ベスト3のイベント」とは、科学者であれば最も引用された論文3本が発表された時期、芸術家であれば最も高く売れた3作品の発表時期、映画監督であれば最も高く評価された3つの映画作品の公開時期だ。
すると、1位と2位のイベントは50%以上の確率で続いて発生していた。2位と3位、そして1位と3位のイベントも、不自然なほど近い時期に起こっているという結果が出た。
データをさらに掘り下げると、どの分野においても90%の成功者が少なくとも1回は絶好調な時期を体験していることも明らかになった。絶好調な時期の長さは、芸術家が約5.7年、映画監督は約5.2年、科学者は約3.7年だった。
なお、Wang准教授は生産性と絶好調な時期の関係性も考慮したが、相関性は見つからなかった。「多数の成果を生み出した時期には、成功につながる結果が生まれる可能性が高くなるのは当然だ」と考えたが、そうではなかったというのだ。Wang准教授は今後、絶好調な時期が始まる要因や終わる要因について研究する考えだという。