「リーダーシップ」とは何か。計算モデルや神経生物学からアプローチした結論は――

リーダーになれる人とリーダーに従う人、両者の違いはどこにあるのだろうか。また「リーダー」と言っても、ワンマン型のリーダーもいれば、グループ内の和を尊重する民主的なリーダーもいる。こうしたタイプの違うリーダーに共通点はあるのだろうか。

チューリッヒ大学の研究チームは、計算モデルや神経画像技術を用いてリーダーシップについて考察。人々がリーダーシップを取るか、他者に任せるかを左右する認知的・神経生物学的プロセスを特定したと発表した。リーダーシップを取れる人とそうでない人の違いは“責任逃れ”の程度、つまり他人に影響を与える決定から逃げないかどうかだという。研究結果は2018年8月3日の『Science』に「Computational and neurobiological foundations of leadership decisions」として掲載されている。

研究チームは調査対象者に、選択次第では利益を失う可能性もある意思決定を下す権利について、「そのまま持ち続ける」か「グループに任せる」かを選ばせた。そして決定を下す際の脳神経生物学的プロセスを、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて検査。さらに信号検出理論とプロスペクト理論を組み合わせた計算モデルを作り、調査結果から予測される調査対象者1人1人のリーダーシップスコアを算出した。

調査では、意思決定が自分自身の利益のみに影響を与える「個人テスト」と、グループメンバーの利益にまで影響を与える「グループテスト」という2種類のテストを実施。調査対象者の大多数において、グループテストでは個人テストに比べ、自分で決定を下そうとする意欲が低下して“責任逃れ”しようとする傾向が見受けられた。

よく挙げられるリーダー像としては「何かを失うことや、リスクを取ることを恐れない人」や「コントロールできている状態が好きな人」といったものがある。研究チームは、こうした特徴を備えた人は意思決定権を「そのまま持ち続ける」選択をするのだろうかと調べてみたが、こうしたリーダー像は調査から得られたデータを説明できるものではなかったという。

その代わりに研究チームは、“責任逃れ”する傾向は「確実性を求める気持ち」と関係があることを突き止めた。他者にも影響する意思決定をするときには、「これが最善策だ」という確信を持ちたがる二次的認知プロセスによって“責任逃れ”しやすくなるという。「確実性を求める気持ち」は、責任逃れの傾向が強い人で特にはっきり表われていた。

実際に、今回の調査で責任逃れの傾向が弱かった人について分析すると、アンケート調査や現実の社会生活に基づくリーダーシップスコアは高い値を示し、本調査から得られたリーダーシップスコアの予測値と相関関係があったという。

今回の研究結果について、「自分で大部分の決定を下す権威主義者とグループの同意を頻繁に求める平等主義者、リーダーシップタイプの在り方にさまざまなタイプがあることを説明できるものだ」と、研究チームはコメントしている。

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Lead or Follow: What Sets Leaders Apart?Computational and neurobiological foundations of leadership decisions

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