私たちの目はどこを見ているのか――マシンビジョンに応用できる視覚中枢の選択の仕組み

我々は、視界に入る多くのものから注視の対象をどうやって選んでいるのか、そのメカニズムの研究がミュンヘン工科大学で行われている。得られた知見は、マシンビジョンなどロボットの実装に活用できる可能性がある。

我々の視界に入る全てのものは重要かもしれないが、ヒトの眼は網膜の非常に狭い領域(黄斑の中心窩)だけに高い視力があり、視界の大半には低い解像度しかない。そのため対象物を正確に視認するには、その対象を凝視する必要がある。

生物工学センターを率いる動物学部のHarald Luksch教授は、「無意識のうちに、次にどこを見るのかという意思決定がなされているが、我々の目的は、詳細にこの選定プロセスを調査することだ」と、その研究目的を説明する。

Luksch博士によれば、この注視制御には次に中心窩が向けられる視界の評価が関係しており、注視する対象の選択は「isthmic system(峡部システム)」と呼ばれる脳のニューラルネットワークによって行われているという。このネットワークは鳥類において解剖学的によく特徴づけられているため、研究はニワトリと、一部試験管培養された脳組織を使って行われた。

Luksch教授は「我々は視覚中枢の個々の神経細胞が脳の3つの領域に並列接続を確立し、それぞれがフィードバックループを作成することを明らかにした」と語る。このフィードバックは、視野の中の最も顕著な視覚刺激を強め、同時に他を抑制するが、驚くべきことに視覚中枢の単一の神経細胞が、この刺激と抑制を行っていることがわかった。

そして、この選択プロセスを技術的な回路図に表すことで、視覚の選択メカニズムをロボットにも実装できるという。Luksch教授は、将来的に人と対話するようなロボットへの応用において重要になると予想している。

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