富士経済は2018年10月2日、自動車や電力貯蔵システムなどの製品に採用される大型二次電池の世界市場を調査し、その結果をまとめた「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望2018」を発表した。同調査によると、自動車向け二次電池市場は2030年に12.4兆円に到達するという。
この調査では、「同 次世代環境自動車分野編」でHVやEVなどの環境対応車8品目の駆動用二次電池と自動車の補機用二次電池の、「同 エネルギーデバイス編」で二次電池や使用される材料の市場の現状を調査・分析し、将来を予測している。
同報告書では注目市場としてまず、自動車における駆動用二次電池の世界市場を挙げている。2017年は1兆8571億円で、中国を中心に増加するEV向けの比率が高いことから、2018年には1兆円を超えるとみる。次いで、1台当たりの搭載容量が大きいEVトラック・バス向けが続く。2030年にはEVに加えPHVの比率が高まるため、2017年比5.6倍の10兆3172億円(うち、EV向けは5.9兆円、PHV向けは2.5兆円)に拡大すると予測。
エリア別では、中国や北米・中南米の比率が高く、特に中国は市場の半数以上を占める。2030年では中国が4.6兆円と予測され、比率は下がるものの45%を占めると予測。欧州は2.3兆円、北米・中南米は2.1兆円で、それぞれ市場の20%程度を占める。
注目市場の2つ目は、自動車における補機用二次電池の世界市場。同市場は、2017年は1兆5628億円だった。内燃機関自動車(ICEV)、アイドリングストップ自動車(ISSV)向けが95%以上を占めるが、環境対応車でも補機用電池は搭載される。ICEV/ISSV向けの最大の需要地は、バッテリーの交換などの更新需要を含めると北米・中南米となる。将来的には縮小が予想されるものの、非電化地域が多い新興国や更新需要を中心に底堅い需要が予想されることから、2030年の市場は2017年比横ばいの1兆5132億円と予測している。一方で、環境対応車向けは、EVなどの普及により2030年には2017年比12.2倍の6052億円と大きく成長。補機用電池全体の拡大をけん引していくとみられる。
なお、電池種別ではICEV/ISSV向け、環境対応車向けを問わず、信頼性の高さや低価格であることを理由に鉛電池が2017年時点でほぼ100%を占めた。今後は低価格化や低温始動性・高温耐久性の向上などによって、リチウムイオン電池の採用が段階的に進むとみている。
自動車、電力貯蔵、動力分野で使用される大型二次電池の世界市場は2017年で4兆6995億円だった。各分野とも伸びが予想され、2030年には15兆7126億円に拡大するとみている。分野別には自動車分野の比率が高く、駆動用電池の伸びにより2017年の73%から、2030年には80%近くにのぼるという。大型二次電池市場においても鉛電池からリチウムイオン電池へのシフトが進むと推測している。
自動車向けや電力貯蔵など、大型用途のリチウムイオン電池主要材料6品目の2017年の市場は9527億円。2018年には1兆円突破が見込まれ、EVなどの普及によるリチウムイオン電池の需要増加により今後も拡大し、2030年には2017年比7.5倍の7兆1390億円と予測している。
6品目の中で最も比率が高いのは正極活物質で、次いでセパレータ、負極活物質と続く。各材料は低コスト化が進むとみられるが、電池容量に直接影響する基幹材料の正極・負極活物質は、低コスト化だけでなく高容量化も開発テーマとなっている。正極活物質は、高容量化・低コスト化を目的にハイニッケル化が進行。他材料と比べるとメタルの市況の影響を受けやすいことから低コスト化しにくい面もあり、今後正極活物質の比率は高まると予想している。