プログラミングの知識ゼロからSIerを経てWeb開発へ。女性エンジニアの働き方を追求していきたい――ヴォーカーズ 平野令奈氏

就職や転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「Vorkers」(ヴォーカーズ)。社員や元社員の声を共有することで、ジョブマーケットの透明性を高め、より良いマッチングや自分らしく生きることをサポートしている。運営会社であるヴォーカーズの平野令奈氏は、Vorkersの要となる「社員クチコミ」に関する機能の開発や運営を担当。ユーザーの反応を見てサイトの改善に取り組む彼女に、「エンジニア」としての視点、「女性」としての視点で働くことについてお話しを伺った。(執筆:杉本恭子、撮影:水戸秀一)

――大学では商学部だったそうですが、どういうきっかけでエンジニアに興味を持ったのですか。

大学の授業でマーケティング戦略のグループワークがありました。Webサイトやシステムを活用する戦略を学生なりにいろいろと考えましたが、私自身はWebやITに詳しくなかったので、「そういえば、これって実際どうやって動くんだろう」と思ったのが最初のきっかけです。

私の専攻は商学科でしたが、社会情報学科のゼミを選びました。ゼミでお世話になった先生が情報系の方で、そういう世界の話を聞いたり、他のゼミ生がITに関する論文を書こうとしている発表を聞いたりしているうちに、興味がわいてきました。

――就職先は、最初からエンジニアに絞っていたのですか。

何かを作り出す仕事に就きたいと思ったので、エンジニアは選択肢の1つでした。IT系のほかに広告やアパレルなども調べましたが、最終的には独立系のSIerに就職しました。現場で自分の手を動かして作る仕事がいいと思っていたところ、私は運良く開発の部署に配属されました。

入社するまでプログラミングの知識はゼロだったのですが、同期の8割ほどが未経験だったので、「一緒にがんばろう!」という感じで新人研修を受けました。

発信していく仕事をしてみたい

SIer時代にはトラブルプロジェクトに投入されたことも。「大変だったけれど、いい経験になった」と前向き。

――実際の開発現場はどうでしたか。

研修でプログラミングの概念などもだいたいは理解できたと思っていたのですが、現場に出てみるとまったく違いましたね。現場のソースコードは、研修だけの知識ではとても読み切れないし、意外と泥臭くて、きれいなコーディングとは限りません。研修で学んだことは重要でしたが、現場で学べることはもっと多いと感じました。

最初はクレジットカード、製鉄、福利厚生サービスなどの業務系システム開発にシステムエンジニアとして携わり、基本設計から開発・保守までの一連の工程を経験することができました。

――5年ほど後の2015年3月に、ヴォーカーズに転職しましたね。なぜ転職しようと考えたのですか。

自分のキャリアを考えるきっかけとなったのは結婚です。1社目の仕事は、どこの現場にどれくらいのスパンで行くのかが不確定で、子育てなどがしにくいのではないかと思いました。

またSIerのシステムエンジニアは、キャリアアップに伴って、仕事を獲得する営業的な役割を求められるケースが多いのですが、私は営業にはあまり興味がありませんでした。技術特化型で突き進むのか、それとも、他にやってみたい仕事があれば、このままの職種にこだわらなくてもいいのかなと思いました。

――Webのエンジニアを選んだ理由は。

SIerの仕事は、取引先のお客様の意向をくみ取り、それを実現していくという仕事です。それもやりがいがあって面白いのですが、もっと自分がエンドユーザーと向き合い、良いと思うものをこちらから発信していくような仕事もしてみたいと思うようになったからです。

またヴォーカーズは、「さあ、自由に生きよう。働きがいをすべての人へ」という経営理念を掲げていますが、サービスを利用するユーザーだけでなく、自社の社員にもこの理念を提唱しているので、自分のライフプランを設計しやすい環境だろうと思いました。実際、働き方や制度に関する社員の意見を聞き、検討し導入してくれます。フレックスタイムも導入されており、早く帰ったり、遅くまで集中してがんばったり、自分なりのペースで仕事を進めることができます。

生き生きとしたものにかかわれている

家事はご主人と分担。平野さんの料理はあるものでパパっと。ご主人が作るのは凝った料理で美味。

――現在は、どのような仕事を担当していますか。

転職や就職のための情報を提供している「Vorkers」は、特に社員や元社員による充実したクチコミが特徴です。私はその社員クチコミに関する機能の派生開発を中心に担当しています。

Vorkersは会員登録をして利用いただくのですが、クチコミを閲覧するには、自社のクチコミを500文字以上投稿する、あるいは就職・転職サービスに登録するなど、もう1ステップのアクションが必要な仕組みになっています。今、社内では多くのプロジェクトが動いていますが、私は会員がクチコミ閲覧まで進むことを促進するプロジェクトに所属していて、そのための工夫や改良等を主に行っています。

――中心的なサービスを担っているわけですね。どのようなことにやりがいを感じますか。

サイトは日々改善しているので、どんどんいろいろな機能が追加されていきます。サイトが進化していく様子をすごく身近で感じることができ、生き生きとしたものにかかわれていることにやりがいを感じます。

また仮説を検証するためにABテストなどを行うこともあり、私たちが立てた仮説に対するユーザーの反応を見られるのもおもしろいですね。

――平野さんご自身の強みは。

自分で情報を持っていなくても、「誰がどの情報をもっているか」を把握するように心がけていることですね。このシステムを管理しているのはあの人とか、このアプリケーションに強いのはこの人とか。いろいろな人とコミュニケーションを取るようにし、できるだけ高くアンテナを張って、どこで何が起こっているかを把握できるようにも心がけています。強みを活かして、みんなを繋ぐ役割になれるといいなと思います。

「スプラトゥーン2」というアクションシューティングゲームにハマっている平野さん。「チームプレーがバスケ部時代の試合の感覚に近くて楽しい」。

――ではエンジニアとして仕事をし続けるために、何が必要だと思いますか。

エンジニアという仕事では、勉強はずっと続きます。好きならばそれほど苦ではないと思うし、いろいろなことに興味を持てる人は自然と勉強していると思います。視野を広げて、情報をどんどん吸収する姿勢が大事なのではないでしょうか。

エンジニアと言っても、いろいろな分野があります。私はSIerからWeb系に移りましたが、エンジニアとして働き続けるとしても、環境を変えたり、新しい分野に挑戦したりすることはできると思うので、視野を広く持つといいと思います。

――平野さんはこれからどのようなことをしていきたいですか。

まず、ずっと作る立場で働き続けたいというのが前提としてあります。エンジニアで産休を取っている人はまだ当社にはいないのですが、いずれ私も子どもが欲しいと思っているので、子育てをしながらエンジニアとしてより働きやすい仕組みや、エンジニアの業務のあり方なども考えていきたいと思っています。


平野氏のお話しにもあったように、ヴォーカーズは一人ひとりが自分らしく輝いて生きられるように「さあ、自由に生きよう。働きがいをすべての人へ」という経営理念を掲げている。健全な雇用環境の発展に貢献し、「働きがい」を提供している企業として、社会や求職者だけでなく、自社で働く社員からも選ばれ続ける必要がある。このような考えのもと、社員に対してさまざまなワークスタイルを提案している。その取り組みについて、同社HR 久保田翔子氏に話を伺った。

1人1人に合わせて、「働き方」を作っていく

HR 久保田翔子氏。どんどん新しい制度を導入するにはスピードが大事。

ヴォーカーズは、月間フレックスタイム制(コアタイムは10時から16時)を導入しており、夜は22時までには帰ることを推奨しているというが、特に強制する必要もなく、自然とみんな帰っていくそうだ。

またセミナー受講や勉強に必要な本の購入など、自己啓発のために年間12万円の支援金を補助する「キャリア・スキル支援制度」があり、業務時間外に他の会社に籍を置いたり事業を営んだりする副業も可能で、個人の成長やチャレンジを応援する体制が整っている。

今年9月から2か月間は、全社員を対象にリモートワークの試験運用も行っている。月曜日と木曜日は出社、それ以外の曜日はどこで仕事をしてもいいというもので、試験運用後に社員からフィードバックをもらい、導入するかどうか、あるいはどういう運用が良いかなどを検討するという。

リモートワークを検討するきっかけとなったのは、社員からの声で、これに限らず同社では、社員の意見や提案から働き方を検討することが日常的にある。また一般的な産休や育休、結婚休暇、配偶者出産休暇などのほか、1人1人の状況に応じて柔軟に支援している。たとえば妊娠中のつわりがひどかったり、ご家族の介護の時間が必要な社員には、制度の有無にかかわらずリモートワークができるようにするなどの個別対応も行っている。社員が増え、組織が大きくなる中で制度も都度見なおし、今後も組織の変化に合わせて、社員1人1人の「成果に報いる」ことができる制度作りをおこなっていくという。

先ごろ全社員を対象にエンゲージメント調査を行ったところ、特に子どもがいる「パパ・ママ社員」の満足度の高さが顕著だったという。早く退社して、子どものお迎えに行くなど時間を調整でき、育児とのバランスがとりやすいことが、パパ・ママの満足に繋がっているようだ。

久保田氏は「私たちも選ばれる会社を目指さなければいけない。他の会社が取り入れていないような新しい制度、ワクワクするような制度も導入してみたいと思っています」と話す。サポートが必要な人には、その1人1人の状況に合わせた「働き方」を作っていくヴォーカーズ。社員の「働きがい」が企業の力となっている。

関連リンク

株式会社ヴォ―カーズ
Vorkers



ライタープロフィール

杉本 恭子

幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。心理カウンセラー。


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