- 2018-12-17
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- Scientific Reports, ミツバチ, ミツバチの雲, 学術, 豪クイーンズランド大学脳科学研究所
車は猛スピードでカーブに進入すると、タイヤが横滑りを起こす。空中を飛び回るミツバチはどうやって急旋回しているのだろうか?豪クイーンズランド大学脳科学研究所の研究チームは、ハイスピードカメラを使って定量的に解析し、ミツバチは飛行速度と曲率を素早く変えることで旋回時の遠心力の影響を抑えていると発表した。研究成果は、2018年11月16日付けの『Scientific Reports』に掲載されている。
乗り物でも動物でも、高速で曲がろうとすると遠心力が働き、転倒など危険を伴うことは明らかで、必然的に速度を落とすものだ。動物の行動を定性的に示したものはあるが、これまで速度や曲率(旋回半径の逆数)の関係を定量的に解析したものはなかった。
研究チームによる実験はまず、ミツバチの巣箱の入り口を一時的にふさぐことから始まった。巣に入れずに、うろうろ飛び回るミツバチたちはやがて「ミツバチの雲」を形成する。そのミツバチの雲を、2台のハイスピードカメラを使って撮影。5.8秒間のステレオデータを取って、66匹のミツバチの3次元の位置座標から飛行軌道を同定し、ミツバチの飛行速度、加速度、旋回時の曲率をベクトル解析を用いて算出した。
解析の結果、飛行速度は旋回を開始すると減少し、旋回が終わると増加することを確認。曲率は逆の動きを示した。求心加速度は、速度の2乗と曲率に比例する。ミツバチは飛行中に、速度と曲率を刻々と変えることで、求心加速度をほぼ一定に保ち、遠心力の影響を最小限に抑えていた。旋回時の平均遠心力はミツバチの体重の約30%だった。このことと、体の向きの解析から、旋回時の横滑りは起こしていないと考えられる。
おもしろいことに、ミツバチの旋回方向の分布を調べたところ偏りがなく、個々の好みはあるかもしれないが、全体としては右旋回・左旋回の好みがないことも分かった。右旋回・左旋回時の求心加速度分布にも大きな偏りがなかった。さらに、ミツバチはうろうろ飛び回っているときも、ほかのミツバチを避けるときも平均求心加速度は同じ、つまり旋回のダイナミクスは状況に関わらず同じことがわかった。
研究チームは今後、ミツバチ同士の近接ターンの際に衝突回避動作を誘発する感覚情報についての研究を進めるとしている。衝突回避方法や、横滑りしない安全な旋回方法の理解を深め、高度な飛行制御とナビゲーション能力を備えた飛行機やロボット、陸上車両へ応用したい、と研究チームはその狙いを明らかにしている。