結晶シリコン系太陽電池の新材料、酸化チタン薄膜のヘテロ界面の構造を解明――高効率化に期待 名古屋大

名古屋大学は2018年12月20日、同大大学院の山本剛久教授と宇佐美徳隆教授らの研究グループが、高いパッシベーション性能を示す酸化チタン極薄膜を開発し、それと結晶シリコンとのヘテロ界面の電子構造を原子レベルで明らかにしたと発表した。

近年、原子層堆積法で結晶シリコン上にヘテロ接合した酸化チタン薄膜は、比較的高い変換効率を示すことから、結晶シリコン系太陽電池の性能を高めるヘテロ接合材料として期待されている。しかし、高いパッシベーション性能を示す酸化チタン薄膜と結晶シリコンとのヘテロ界面の詳細な構造は明らかでなかったため、酸化チタン薄膜を用いた新規ヘテロ接合材料の開発指針は立っていなかった。

酸化チタンを製膜前にさまざまな条件で酸化処理を施した結晶シリコンのキャリア寿命

そこで、高いパッシベーション性能を示す極薄膜の酸化チタンの製膜技術を持つ宇佐美教授のグループと、原子レベルで試料の構造を調査するための解析技術を持つ山本教授のグループとが連携し、高いパッシベーション性能を示す酸化チタン極薄膜の断面構造の解明を試みた。

研究では、単結晶のシリコン基板を洗浄した後、オゾン水(DI–O3)、過酸化水素水(H2O2)、110℃に熱した硝酸(HNO3)、常温の硝酸を用い、事前に酸化処理を施してから、原子層堆積装置で3nmの酸化チタンを製膜。その後に熱処理を行い、高いパッシベーション性能を発現させた。加えて、透過型電子顕微鏡と電子エネルギー損失分光法により、熱処理前後の試料のヘテロ界面構造を解析した。

(a)アニール前と(b)アニール後の酸化チタンと結晶シリコン界面近傍の断面透過型電子顕微鏡像

その結果、酸化チタン極薄膜は、熱処理前にはシリコンの酸化膜が化学量論的比から外れた密度の低い膜であったものが、熱処理をすることにより、チタン原子が含まれた化学量論比に近い密度の高いシリコン酸化膜になっていることが明らかになった。また、酸化チタンと酸化シリコンの間には、両者が混在した混合膜が発生していることも分かった。さらに、チタンを含んだ化学量論比に近い密度が高いシリコン酸化膜が高いパッシベーション性能に極めて重要であることも判明した。

アニール前の(a) シリコン(b) 酸素(c) チタンとアニール後の(d) シリコン(e) 酸素(f) チタンの電子エネルギー損失分光スペクトル。図中のpointは図2のpointと対応し、各位置における電子構造を反映した形状が現れている

今回の成果は、酸化チタンの高性能化のメカニズム解明に役立つだけでなく、高性能な新規ヘテロ接合材料の開発指針につながるという。そしてこれにより、結晶シリコン系太陽電池のさらなる高効率化が期待できるとしている。

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