プラスチックを生分解する幼虫と腸内細菌との謎多き関係――環境汚染対策の鍵となるか

プラスチック廃棄物は世界中で大きな問題となっているが、カナダのブランドン大学(BU)では「ワックスワーム」と呼ばれるハチノスツヅリガの幼虫の能力について研究が行われている。その研究結果が、2020年3月4日付で『Proceedings of the Royal Society B: Biological Science(英国王立協会紀要)』で発表された。

ワックスワームはハチの巣に寄生して巣の蜜ろうを食い荒らすため、養蜂家にとっては大敵だが、ワックスワームにとって、ハチの巣の蜜ろうを食べることとプラスチックのレジ袋を食べることは同じ栄養分を取っているに過ぎないようだ。

研究者たちは、ワックスワームを「plastivore(プラスティヴォーレ)」と呼んでいる。英語の「plastic(プラスチック)」に接尾辞「-vore(~を食べる動物)」を組み合わせて作られた造語で、「プラスチックを食べる生物種」という意味だ。研究室では、60匹のワックスワームが30cm2を超える大きさのプラスチック袋を1週間もたたないうちに食べ切ることができた。

BUの研究者たちは、ワックスワームがプラスチックの一種であるポリエチレンのみを餌にして生き延びられることを発見し、プラスチックを唯一の栄養源として1年以上生存できる腸内細菌の分離にも成功した。

しかし、分離された腸内細菌は、プラスチックを分解する速度が非常に遅くなることが分かった。また、ワックスワームに抗生物質を与えて細菌を減らすと、ワックスワームはプラスチックを分解しづらくなる一方で、ワックスワームに通常のえさを与えた場合や全くえさを与えなかった場合と比べて、ポリエチレンのみ与えた場合は腸内細菌が増加したという。このため、研究者たちは、宿主であるワックスワームと腸内細菌との間にプラスチックの生分解を促進する何らかの相乗作用があると考えている。

BUのBryan Cassone博士は「プラスチックごみ問題はあまりにも規模が大きいので、単に虫に任せただけでは解決しない。しかし、腸内細菌がどのようにしてワックスワームと一緒に働いているのか、どのような状態であれば生分解が活性化するのかを、もっと理解できれば、私たちの環境からプラスチックやマイクロプラスチックを一掃するツールの考案に役立つだろう」とコメントしている。

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