無電源で動作する物理的論理ゲートを開発――ハエトリソウがヒント

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アメリカのペンシルバニア大学工学応用科学大学院の研究チームは、3Dプリンターを使って電源なしで動作する論理ゲートを開発したと発表した。入れ子構造になった条件分岐構造も可能で、水や油の有無といった周辺環境の単純な変化に応答して動作する。研究結果は2019年1月10日付けの『Nature Communications』に掲載されている。

食虫植物のハエトリソウは、虫を捕まえるためにいつ葉を閉じるか、また餌でないものを誤って捕まえた時いつ葉を開くか、うまく開閉を制御している。そこには複雑な神経回路や電子制御は存在しない。植物は、材料組成と幾何学的構成を利用して、外部からの刺激に反応して形状を変えることができる。

研究室ではハエトリソウの動きに着想を得て、幾何学的な「双安定性」と化学的な「応答性」を組み合わせ、電源不要の「AND」「OR」「NAND」ゲートを作成した。

形状変化材料は珍しくないが、その多くは等方的に変化するため、きめ細かい変形制御は難しい。研究チームは、マルチマテリアル3Dプリンターを利用することで、部分的に異方的な変形をする構造物の作製に成功した。

ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ハイドロゲルをベースに、ガラスもしくはセルロースの繊維を注入し、45度の梁をもつ構造物を作製。梁は、圧縮されると材料内に弾性エネルギーを蓄え、外部刺激が加わると内部のエネルギーを放出して形状を変える。非弾性の繊維を梁と平行に印刷することで、一方向のみの変形が可能になった。

梁の長さと幅の比や繊維の密度を変えると、感度の異なるアクチュエーターを作ることができる。PDMSはトルエン、ハイドロゲルは水に反応するため、これらを組み合わせて論理ゲートを具体化し、複雑な動きをする構造物を作製することができた。

動作検証のために、特定の溶媒に接するとロックが外れ、その間に機械的負荷がかかったときのみ閉じるハエトリソウを模した物体、油と水が両方存在するときのみ開く箱などを作製した。

外部刺激として光や温度を利用したり、微視的サイズの物体にも応用できる。研究チーム率いるJordan Raney助教授は「マイクロ流体力学分野のアプリケーションにおいても有効だ。常に読み取りが必要な固体のセンサーやマイクロプロセッサーと異なり、この手法では例えば特定の汚染物質を検出したときのみ遮断するゲートを設計することができる」と語る。

さらに、バッテリーやコンピューターが不要なため遠隔地での利用も可能。長時間休眠状態であっても特定の刺激があったときのみ起動できることから、砂漠や高山、果ては他の惑星など厳しい環境で動作するデバイスの可能性も秘めている。



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