力学負荷で強度が変わるハイドロゲルを開発――筋肉のようにトレーニングで強くなる

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北海道大学は2019年2月1日、筋肉が筋力トレーニングにより増大/増強するのと同様のメカニズムで、強度や弾性率などが大きく成長するハイドロゲルを同大大学院先端生命科学研究院、国際連携研究教育局、創成研究機構化学反応創成研究拠点の共同研究チームが開発したと発表した。

筋肉は筋力トレーニングで大きな負荷がかかると、以前よりも増大/増強する。それは①栄養であるアミノ酸などが血管から供給される②筋肉に負荷がかかると、筋繊維の破壊が起きる③筋繊維の切れた部分が、栄養により再生・強化される――というメカニズムに基づいて生じる。

一方、一般的な金属やプラスチックなどの人工材料は、上記の①と③を満たさないため、負荷がかかっても構造が変化しない。そのため、一度劣化すると取り替える必要がある。また、性能が使用環境に応じて自発的に向上することもない。そこで、①と③の条件を満たす素材の開発を研究チームは試みた。

そのために研究チームが着目したのが、ハイドロゲルの一種であるダブルネットワークゲル(DNゲル)だ。ハイドロゲルとは、網目状の高分子の内部に大量の水を含んだゼリー状の材料のこと。一般的なハイドロゲルは脆く、強い力を支えるのは困難だ。しかし、DNゲルは重量の9割が水であるにもかかわらず、トラックで踏みつけても壊れないほどの強靭さを備える。

DNゲルは水を多量に含むため、外環境にある水溶性の物質を吸収できる。筋肉が主にアミノ酸という栄養素から作られているのと同様、DNゲル中の高分子網目はモノマーという水溶性の分子で出来ている。従って、モノマーが溶けた水にDNゲルを漬けておけば、DNゲルはモノマーをまるで栄養であるかのように吸収できる。

さらにDNゲルは脆い網目と伸張性のある網目の複合体であり、力学負荷を受けると多くの脆い網目が壊れる。この時、不対電子(ラジカル)が大量に発生する。ラジカルは、モノマーから高分子網目を作る化学反応(重合)を起こす。そのため、DNゲルに力学負荷が加わり構造破壊が起きると、モノマーが重合して新しい高分子網目が合成される。その結果、DNゲルの高分子重量や強度が増大する。

重合によりDNゲルの性能がどの程度変化するか試すため、モノマー水溶液に浸したDNゲルに引張力を与え構造破壊を起こす試験を研究チームが実施したところ、延伸され構造破壊が起きた後のDNゲルの強度は元の1.5倍、弾性率(硬さ)は最大で元の23倍に増大した。その際、DNゲルに含まれていたモノマーの約90%が重合に使われ、実際にDNゲル内部の高分子重量は延伸により86%も増えていた。

力学負荷によるDNゲルの成長/強化。モノマーを含んだDNゲルに力学負荷を加えることで、その強度は1.5倍、硬さは23倍に増大する。

筋肉と同様に、DNゲルは何度でも強化できる。DNゲルに重りを付け、モノマー水溶液中で引き伸ばす実験を行ったところ、1度目はまだDNゲルが柔らかく、重りは持ち上がらなかった。しかし2度目には、先の延伸で新しい高分子網目が重合されDNゲルが強化されたため、重りは持ち上がった。3度目の延伸時には、DNゲルがより強く硬くなり、より高い位置まで重りが持ち上がった。

栄養素となるモノマーの種類を変えれば、DNゲルに力学負荷により多様な機能を付与できることも、研究チームは見出した。NIPAAmというモノマーは重合されると、温度応答性の高分子であるPNIPAAmとなり、低温では水に溶け、高温では水に溶けなくなる。研究チームは、NIPAAmを含むDNゲルに部位選択的な力学負荷を加え、負荷を受けた部位でPNIPAAmを重合させ、当該部位を高温時に白く浮かび上がらせることに成功したという。

モノマーとしてNIPAAmを用いたDNゲルの部位選択的な成長。力学負荷を加えた部位に温度応答性高分子PNIPAAmが重合されるため、本ゲルを温めると負荷を受けた部位のみが白く浮かび上がる。材料劣化部位の可視化技術などとして期待される。

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