1MHz以上の高周波領域で昇圧可能な高効率直流電源を開発――受動電子部品を最小化 神戸大学と台湾・国立中興大学

神戸大学は2024年4月1日、同大学大学院海事研究科と台湾・国立中興大学の共同研究グループが、受動電子部品を最小化し、1MHz以上の高周波領域で直流電圧を高昇圧する機能を搭載した高効率直流電源を開発したと発表した。

振動や温度差を用いた環境発電や燃料電池を用いる際には、家電製品などに適合するように昇圧する必要がある。既存の高昇圧直流電源はパワー半導体素子や受動部品の搭載数が多いため、小型化やメンテナンス性、高効率性、信頼性の向上が求められていた。

同研究グループは今回、高速スイッチング(高周波化)や搭載受動部品の削減、電力損失および電磁ノイズの抑制(ソフトスイッチングの導入)を可能とする電力変換回路技術を開発した。

GaN-HEMTを採用しており、CLC共振タンクや高周波プレナートランスの漏れインダクタンスによる共振作用を活用。スナバ(補助部品)なしで1MHz以上のゼロ電流ソフトスイッチング(ZCS)が可能となっている。

MHz駆動スナバレス複合共振DC-DCコンバーターの回路構成および制御システム


試作器外観

定格出力120W、動作周波数1〜2MHzの試作機を作製し、評価実験を実施した。高周波インバーターQ1、Q2に100V系GaN-HEMTを、倍電圧整流回路にSiC-SBDを用いている。高周波プレナートランスはMnZn系フェライトを使用した。

負荷率に応じた実測動作波形の測定では、1.1MHz、1.5MHzといった高周波動作でのソフトスイッチング動作を確認している。

負荷率に応じた実測動作波形

また、負荷率86%(104W、1.5MHz)における実測電力変換効率が91.3%、電力密度が39W/in3となった。

実測効率特性

起動10分後での各装置部品の発熱状況をサーモグラフィーで計測したところ、パワー半導体デバイスでの損失が低減していることも確認した。


装置温度分布

今回開発した直流電源は、燃料電池や環境発電、エネルギーハーベスト、医療用電源などへの応用が期待される。

同研究グループは今後、電子回路基板などを改善するほか、電力密度100W/in3の達成を目指し、kWクラスの大きな電力容量への適用を図る。また、水素エネルギーの応用電源システムにも展開する。

関連情報

徹底した省部品化と高速性・高昇圧比・低ノイズ性を備えた 高効率直流電源を開発 | 神戸大学ニュースサイト

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