大気と体温の温度差で発電する伝導性ポリマーを開発――身体に装着するだけでデバイスを充電

Photo courtesy UMass Amherst/Andrew lab

マサチューセッツ大学アマースト校(Umass Amherst)の研究者らが、人間の体温と空気の温度差を利用し電力を生み出して、活動量計のような小型ウェアラブル端末を充電できる布地を開発した。研究成果は、『Advanced Material Technologies』のオンライン版で発表されている。

研究者らが開発したのは、熱電効果を利用して発電する布地である。高い電気伝導性と低い熱伝導性を持つ物質は熱電効果により、暖かい場所から冷たい場所に電子を動かせる。開発された布地はこの原理を活用し、体温と大気中の冷えた空気の間の差から電力を発生させる。

現状でも人間の体温を利用して、小型デバイスを1日8時間駆動させる電力を取り出す熱電物質はあるが、高価かつ有毒物質を含み、発電効率も低いという。今回Umass Amherstの研究者らは、生体適合性、柔軟性、軽さを備え、地球上に豊富に存在する物質で作られたフィルム状のポリマーを、コットンの生地に低価格で蒸気プリントし、小型デバイスを駆動するために十分な電圧を得ることに成功した。

具体的には、「Poly(3,4-EthyleneDiOxyThiophene)」(PEDOT-Cl)という伝導性ポリマーを、細かい布目と中程度の布目の2種類のコットンに蒸気印刷することで、局地的な温度差から電力を取り出すことのできる熱電錐(Thermopile:サーモパイル)を作製した。

そして、このPEDOT-Clを使ったサーモパイルを組み合わせたウェアラブルバンドを製作したところ、手に着用するだけで20mV以上の熱電圧を生成することを確認した。このウェアラブルバンドは、熱伝導率が低いコットンを利用することで、サーモパイル中の温度勾配を長時間に渡って保持、継続的に熱を電力に変換できるという。

蒸気印刷で貼付したPEDOT-Clの耐久性を確かめるため、研究者らはこれをお湯の中でこすったり洗濯したりした後、その電子顕微鏡写真を撮って解析した。その結果、貼付されたPEDOT-Clに亀裂はなく、断層もなく、摩耗による流失もないことが認められ、その頑丈さが確認できたという。

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