- 2019-12-12
- ニュース, 化学・素材系, 技術ニュース
- Airsist, McKibben型人工筋肉, ソラリス, 中央大学, 人工筋肉, 伸張結晶化特性, 可変粘弾性下肢アシスト装具, 広角X線回折, 搬送用ぜん動ポンプ, 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO), 研究, 空気圧ゴム人工筋肉, 身体装着型アシスト装置, 軸方向繊維強化型人工筋肉, 駆動装置(アクチュエーター)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と中央大学は2019年12月11日、空気圧ゴム人工筋肉の寿命を最大100倍にすることに成功したと発表した。開発した人工筋肉は、可変粘弾性下肢アシスト装具Airsistなどへの適用を目指すという。
高齢化による労働力の不足から、農業/製造業/介護などの分野では、作業負担を軽減する身体装着型アシスト装置の実用化が期待されている。空気圧ゴム人工筋肉は、その身体装着型アシスト装置などに用いられる駆動装置(アクチュエーター)の1つだ。なかでも、軸方向繊維強化型人工筋肉は、軽量かつ柔軟で、低圧駆動で最大38%以上収縮するなど、従来用いられていたMcKibben型人工筋肉と比べて収縮特性に優れる。しかし、変形が大きいため、劣化による亀裂が発生しやすく、寿命が短いという欠点があった。
そこで、NEDOと中央大学は今回、軸方向繊維強化型人工筋肉の素材であるゴムの伸張結晶化特性を利用。亀裂が広がることを防ぎ、ゴム材料の長寿命化に成功した。
具体的には、伸長/収縮させた同人工筋肉を広角X線回折で測定することで伸張結晶化特性を調査。伸張過程では4倍以上に伸ばした時点から、収縮過程では3倍まで縮めた時点まで、結晶層が形成されることを確認した。この知見に基づき、常に結晶層が形成されるように人工筋肉を制御したところ、80万回を超える伸縮が可能となった。これは、従来では破断していた伸縮回数の100倍以上にも及ぶという。また、1分間に2回程度のアシストと1日5時間の稼動を仮定すると、4年程度の使用が可能だ。
NEDOと中央大学は今後、Airsistシリーズの新型への適用のほか、深海や月面など、極限環境での掘削作業に使用する土砂の搬送用ぜん動ポンプへの応用も検討しているという。また、中央大学発のベンチャー企業ソラリスを通したAirsistの事業化も目指すとしている。