ステーキ肉の人工培養組成に成功――牛肉本来の食感を再現 日清など

日清食品ホールディングスは2019年3月22日、肉本来の食感を再現した培養肉である「培養ステーキ肉」の実用化に向けた第一歩を踏み出したと発表した。東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授率いる研究グループとの共同研究において、牛肉由来の筋細胞からサイコロステーキ状の筋組織の作製に成功したと報告している。

培養肉とは、動物の細胞を体外で組織培養して作製した食肉のこと。厳密な衛生管理が容易で、無菌的な培養が可能なため、有害菌による汚染のリスクがない。家畜の飼育と違って水や飼料は不要で、CO2の排出量も少ないので、環境負荷も低い。飼育のための広大な土地が不要という利点もある。

しかし、これまでに報告された培養肉の研究は、ミンチ肉を作製するものがほとんどだった。そこで竹内教授らの研究グループは、牛肉本来の食感を持つステーキ肉を培養肉で再現するため、ウシ筋組織の立体構造を人工的に作製する研究に取り組んだ。

筋組織の立体構造を牛の体外で人工的に作製するには、ウシ筋細胞を単に増やすだけでなく、より成熟させる(細胞同士を融合させ細長い構造に変化させる)必要がある。しかし、生体内環境と異なる体外で筋細胞を成熟させるには、必要な栄養を行きわたらせ、細胞を適切に配置する技術が必要だった。

研究グループは、培養過程でウシ筋細胞にビタミンCを与えると成熟が進むことを確認。厚みのある培養肉を作製するため、ウシ筋細胞をコラーゲンゲルの中で立体的に培養したところ、筋組織に特有の縞状構造(サルコメア)を持つ細長い筋組織の作製に成功した。筋細胞の集合体を積層して特殊な方法で培養したところ、1×0.8×0.7cmのサイコロステーキ状の大型立体筋組織を作製できたとしている。

筋細胞の成熟過程

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