産業用機器のリモートメンテナンスから航空宇宙・自動車の制御開発、最先端の医療技術まで。様々な制御開発に利用されているMBDの最新トレンド――MathWorks Japan 阿部悟氏

MathWorks Japan インダストリーマーケティング部部長 阿部悟氏


実機を仮想環境でモデル化し、シミュレーションして設計と検証を繰り返し、実装までを行う開発手法である「モデルベース開発(MBD:Model-Based Design)」の最新情報を紹介しています。

第1回目では「MBDの生まれた背景と広く普及した理由」についてお話を伺いました。

第2回目の今回は「MBDの最新トレンド」と題し、MathWorks Japan インダストリーマーケティング部部長の阿部悟氏に、Mathworksが提供するMBD開発向けのツール「MATLAB」と「Simulink」の導入事例をご紹介いただきます。(執筆:後藤銀河、撮影:杉能信介)


[阿部氏]MATLABは、反復的に実施する分析や設計プロセスに適したデスクトップ環境、そして行列と配列の数学を直接表現するプログラミング言語を統合した製品で、Simulinkは、ハードウェアに実装する前にシステムをデザインし、シミュレーションできる検証システムです。MATLABとSimulinkを連携させることで、グラフィカルな環境でシミュレーションを実行し、システム設計を行うことが可能になります。

自動車の制御開発から産業用機器のメンテナンスまで、幅広く活用いただいております。

ベーカー・ヒューズ

米ベーカー・ヒューズでは、MBDによって開発した予知保全システムにより、ポンプ機器の保守コストとダウンタイムの削減を実現している

[阿部氏]アメリカの油田サービス企業大手のベーカー・ヒューズ(Baker Hughes)では、天然ガスと石油採掘機器の保守ソフトウェア開発にMBDを活用しています。同社では、油田毎に容積式ポンプ(positive displacement pump)を搭載したトラックが約20台同時に稼働し、水と砂の混合液を採掘する油井へと高圧で注入しています。

この高価なポンプや内部パーツの摩耗をモニターし、故障が発生する前に予見することが需要です。そこで同社ではMATLABを使って1テラバイト近いデータを分析して機械学習アルゴリズムを適用。石油採掘機器の故障を事前に予測することができるニューラルネットワークを開発しました。

BMW

独BMWは、機械学習アルゴリズムによって車両のオーバーステア状態を検出している

[阿部氏]車両が旋回中にリアタイヤのグリップを失い、遠心力によって内側に回り込もうとする状態になることを、「オーバーステア」と呼びます。これはタイヤの摩耗や滑りやすい路面の状態、旋回速度の超過などの原因によって起こります。

同社ではこの状態を検出するため、車載センサーの測定値が一定の閾値を超えたときにオーバーステアと判定する数学的モデルによる検討を行いましたが、多数の要因の相互関係が複雑なため、実現が困難でした。

そこでMATLABによる機械学習モデルを開発し、オーバーステアを98%の正確性で判定できる電子ユニットを完成させました。

エアバス

エアバスは、MBD手法により「A380」のフューエルマネジメントシステムを開発している

[阿部氏]世界最大の旅客機エアバスA380の航続距離は8000マイル。それを可能にするため、合計250トンのジェット燃料を格納できる11個の燃料タンクが翼内に設けられています。同機のフューエルマネジメントシステムは、飛行中に各タンクからエンジンへの燃料流量を調整したり、タンク間で燃料を移動させることで、飛行機の重心を最適化したり、翼の反り返りを抑える機能を備えています。同社では、A380用のフューエルマネジメントシステムの設計に、Simulinkによるモデル開発を適用しています。

ジョンズ・ホプキンス大学

米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所では、MBDを使って最先端の義手を開発している

[阿部氏]ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)では、着用者が本物の腕の速さや器用さを発揮できる義手を開発しています。プロジェクトでは、Simulink を使用して構築された完全な四肢システムシミュレーション環境であるVIE(Virtual Integration Environment)を構築。ニューラル入力によって駆動される制御アルゴリズムを開発し、高度な感覚フィードバック技術を実現しました。


阿部悟(MathWorks Japan インダストリーマーケティング部部長)
輸送機器制御システムの基礎研究や、エンジン、ボディ、シャシー電装製品や新規製品のビジネス開発を担当し、2012年より数学的計算ソフトウェアの開発を行うMathWorks Japanにて現職。マーケティング活動を通してMBDの推進に尽力している。

取材協力先

Mathworks

関連リンク

MATLAB EXPO 2019 JAPAN


ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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