東京都立産業技術研究センター(都産技研)は2019年5月16日、九州大学と共同で燃料電池や金属空気電池用ナノ粒子触媒の大量生産に適した製造方法を開発したと発表した。
燃料電池や金属空気電池は自動車や家庭用の次世代電源として注目されているが、これらの電池に使用される活性の高い白金触媒はコストが高く、普及の妨げとなっている。そのため、安価なペロブスカイト型酸化物が白金の代替触媒として期待されているが、粒子同士が凝集して表面積が小さいという問題があった。触媒反応は触媒の表面で進行するため、表面積が小さいと低活性になってしまう。
今回、研究チームは代表的なペロブスカイト構造をもつ触媒であるLaCoO3粒子を、対象試料を粉砕/分散する装置「ビーズミル」で処理した。従来から用いられている大きな0.1mm径のビーズを用いて処理したLaCoO3粒子は結晶化度が32%と大きく低下したことから、大きなビーズによって結晶が破壊されていると考えられ、その触媒活性も低いことが分かった。
一方で、30µm径の小さなビーズを用いて処理した場合、LaCoO3粒子のペロブスカイト構造にはダメージを与えることなく、平均粒子径が77nmのナノ粒子が得られた。この径の小さなビーズを用いて処理したLaCoO3触媒は、処理を施していない触媒に比べて触媒活性が2.7倍に向上した。この触媒活性の向上により、電池の出力向上や触媒担持量の低減が可能となる。今回の研究では卓上タイプの小型テスト機を使用したが、量産機にスケールアップすることで、安価にナノ粒子触媒の大量生産が可能になるという。
さらに、ペロブスカイト構造を持つナノ粒子は燃料電池や空気電池用の触媒だけでなく、NOXやCO、HCの酸化触媒としても使用されているため、光触媒や化粧品、電子材料などにも応用可能だという。都産技研は、2019年6月5日から6月7日まで東京ビッグサイトで開催される「2019防災産業展 in 東京」にて同研究のパネル展示を行う予定だ。