- 2022-8-10
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- Journal of Neural Engineering, エッジコンピューティングデバイス, ミネソタ大学ツインシティー校, 人工知能(AI), 学術, 末梢神経接続, 機械学習, 神経駆動, 筋肉, 筋肉駆動, 義手, 脳
米ミネソタ大学ツインシティー校の研究チームが、腕の筋肉ではなく脳の信号を直接読み取って義手を動かせるようにするため、末梢神経接続を介した機械学習により正確で侵襲性の低い技術を開発した。同研究成果は2021年10月11日、「Journal of Neural Engineering」に掲載された。
他の市販の義手システムでは、被切断者は指を動かしたい時に、指を動かそうと考えるわけではなく、実際は腕の筋肉を動かし、システムが筋肉の動きを読み取っている。この筋肉駆動の義手を扱えるようになるためには、数カ月にわたるトレーニングが必要になり、患者にしばしば大きなストレスを与える。そこで、神経駆動となるシンプルな義手の制御に向けて、神経機能を代替する技術開発が目指されている。神経駆動の義手の場合、指を動かしたいなら、患者はその指を動かそうと考えるだけでいいのだ。
人は手を動かすとき、脳からの信号が数千の軸索から成る末梢神経に送られる。研究チームは、人の腕の末梢神経に小型の埋め込み型デバイスを接続し、人工知能(AI)に末梢神経からの信号を機械学習により解釈できるようにした。このデバイスが神経機能を代替してはたらき、思考だけで直接的に義手を操作できる。ここでは深層学習が用いられており、計算量の多さが問題であったが、近年のエッジコンピューティングデバイスの進歩により解決した。
前腕切断者の神経束内に埋め込んだ微小電極から取得した末梢神経信号を用いて、同システムを評価した結果、0.1ミリ秒程度の遅延時間で、かつ95%以上の高精度で個々の指の動きを制御できることが分かった。
同技術は、被切断者だけでなく、神経障害や慢性疼痛に苦しむ患者にも利用できる。また、将来的に脳外科手術を必要とせず、末梢神経から脳にアクセスできるようになるかもしれない。さらに、医療以外にも応用が考えられる。現状では、外部のAIインターフェースと接続するために、皮膚を通してケーブルを出す必要があるが、もしコンピューターにリモートで接続できれば、車や電話などを思考で制御できるようになる。
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