- 2019-6-24
- 技術ニュース, 機械系
- カーボンニュートラル, グラフェン, バイオマス, 含水バイオマス濃縮技術, 研究, 筑波大学
筑波大学は2019年6月21日、太陽光を用いた含水バイオマス濃縮技術と純水製造を同時に実現する蒸発促進材料を開発したと発表した。
今回開発したのは、階層構造を持つ多孔質グラフェンを蒸発促進材料として用いることで、太陽光を効率よく熱に変換し、含水バイオマス中の藻類に熱ダメージを与えることなく水分を蒸発させ、藻類バイオマスの生産速度上昇と共に、純水を製造できる技術だ。熱伝達を制御し、毛細管現象で藻類含水バイオマスから水のみを吸い上げる機構により、藻類を直接加熱することなく水のみを蒸発させる。
従来の加熱工程には、バイオマスの細胞が死滅してしまうという問題が存在していた。また、凍結乾燥や凝集剤を加えて遠心分離するなどの手間とエネルギーがかかるため、カーボンニュートラルが実現できていなかった。
そこで研究グループは今回、既存の局所加熱法に着目。バイオマス生産の効率化を目指し、階層構造を持つグラフェン材料を開発した。
階層構造グラフェンは、発泡ニッケル上にニッケルナノ粒子を担持した後、化学気相蒸着法で窒素を化学ドープし、グラフェンを成長させて作製している。グラフェンの上部表面はミクロな多孔質構造を持つ窒素ドープグラフェンが、また、断面は中空チューブが連続したマクロな多孔質構造を持っていることが観察できた。
光吸収特性は、透過率が0%、反射率が5.5~8.0%で、太陽光の95%程度を吸収するという。また、窒素ドープにより親水性を持ち、水を吸い上げやすい性質もあることが分かった。開発された材料で水の蒸発試験を行ったところ、水の蒸発能力は1時間当たり1.54kg/m2であった。繰り返し試験をしても、水の吸い上げ能力は落ちなかったという。
さらに、階層構造を持つグラフェンで含水バイオマスの表面を覆うことで、グラフェン部に熱が集中し、細胞に損傷を与えずに水の蒸発量を増大できることも実証された。
開発された工程により、藻類やその他濃縮が必要な含水バイオマスからも純水を製造し、かつバイオマス燃料や肥料の生産を可能にする、新たなカーボンニュートラル実現に向けた有効な選択肢の提示ができるとしている。